浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0405A01: | きとぞいはれける。圓勝寺本順和尚は。もと五右衞 |
J18_0405A02: | 門と同藩の人にて。此事親しく聞たりしとて。をり |
J18_0405A03: | をりかたり申されき。 |
J18_0405A04: | 或時。和州當麻山。奧院へ請待の事ありけり。例の |
J18_0405A05: | 遠近踵をつらね。歸信かずをしらず。數日の別行。 |
J18_0405A06: | 事故なく結願す。おもふ所あれば。この序に三輪山 |
J18_0405A07: | に參詣せばやとの給ひて。あらぬ山路をさして立 |
J18_0405A08: | 出玉ふ。案内の者。そは本道にはあらぬをと申せど |
J18_0405A09: | も。いな此たびは。この道より行ぞとの給へるに。 |
J18_0405A10: | 人人心ならずつき從ひけり。其道すがら。今日。 |
J18_0405A11: | 師の通らせ給ふを。早も知りたりげにて。山邨田 |
J18_0405A12: | 家いづれの處にても。香花燈明を供じ。人人多く立 |
J18_0405A13: | 出て。十念をうけぬ。隨從の僧。不思議がりて。今 |
J18_0405A14: | 日師の通らせ給へる事を。如何にして知るぞと。其 |
J18_0405A15: | 人人に問たるに。この十日あまりさきの日。白髮の |
J18_0405A16: | 老人來りて。それの日德本といへる行者の。ここを |
J18_0405A17: | 通行すべきぞ。必十念うけよと告あるかるるにぞ。 |
J18_0405B18: | さの給へるは。誰人にてましますぞと問しかば。 |
J18_0405B19: | 我は行者に松蕈の生ひ出る石を供養したるもの也 |
J18_0405B20: | といはれしと答へき其ころ苔むしたる一奇石を。師に供養したるものあり。この石。手にてたた |
J18_0405B21: | けば。やがて松蕈おひ出る事。常のやうなり。年經て後。誰もて去りしともあらで。いつしかうせてゆく處をしらずとぞ仄徑 |
J18_0405B22: | 深谷をへて。三輪明神へ參詣せらる。法樂し給ふを |
J18_0405B23: | りしも。御山の震動すること夥しかりき。師。のた |
J18_0405B24: | まはく。松蕈石はこの御神の供養し給へりし也と。 |
J18_0405B25: | いと不思議の事なりけり。 |
J18_0405B26: | 文化七年十月のころ。浪華の小橋屋利兵衞後に淸翁といふと |
J18_0405B27: | いへる人の家に請ぜらる。西宮まで御迎の船など出 |
J18_0405B28: | して。四供養の志いと懇なり。兼て士女雲集の事を |
J18_0405B29: | はかりしりてや。御逗留の事を。おほやけにも言上 |
J18_0405B30: | したりとぞ。三日の結縁。日夜ひきもきらず。さす |
J18_0405B31: | がの豪家なれども。家族の居處もなきまでなりけ |
J18_0405B32: | り。浪花にて。化益の盛なりし事。此家ぞはじめな |
J18_0405B33: | りし。人靜まりてのち。家族の人人に。さまざまの |
J18_0405B34: | 御物語ありて。わが護持せるは。九十一億劫むかし |