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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0404A01: らく。はじめ竊におもひけるは。我もし師の如く山居
J18_0404A02: 修行したらんには。攝化衆生の道力も。やはか師に
J18_0404A03: はおとらじものをと。思ひたりき。それぞやがて高
J18_0404A04: 慢の煩惱にてありけるが。忽に顯れしこそいとはづ
J18_0404A05: かしけれとて。其後は化他度生は。かならず還來を
J18_0404A06: 期すべき事に决しぬとぞ申ける。慢に七種九種あり
J18_0404A07: と。論には説給へり。いとおそるべき事にぞ有け
J18_0404A08: る。
J18_0404A09: 文化のはしめ。鸞洲寮に寓せられしころ。高崎侯の
J18_0404A10: 藩に。寺田五右衞門といへる劒道の達人あり。師の
J18_0404A11: 名を聞。來りて十念を乞。舟は楫。扇は要と。師の詠
J18_0404A12: せられたる歌を。殊の外に感佩して。多くの人に語
J18_0404A13: しとぞ。其門人に。白井亨といへる人あり。後には
J18_0404A14: ならびなき劒道家なりとて。世には稱しあへり。こ
J18_0404A15: の人。諸國を經めぐりて。歸府したりし時。五右衞
J18_0404A16: 門殊の外不興にて。汝が修行未精にいらずと呵しけ
J18_0404A17: ればいかさまに修行すべきかと問ければ。よき高僧
J18_0404B18: なとに承問すべしと示しけり。亨。思らく。今の世
J18_0404B19: に高僧と稱んものは。德本行者なるべし。いかなる
J18_0404B20: 事かあらんいでこころ見んものをとて取あへず出た
J18_0404B21: ちぬ。師はこの頃。攝州勝尾にいまして。亨の訪ひ
J18_0404B22: たる日は。十五日にてぞ有ける。師の説法し給へるさ
J18_0404B23: ま。何となく巍然として犯べからざるの氣象あり。
J18_0404B24: 翌日謁見を乞て。我は劒客なり。高僧に逢たらん時
J18_0404B25: 劒法の示を請よと。吾師のいはれしによりて。遙遙
J18_0404B26: 訪奉れり。願くはしらせ給ふ事もましまさば。をし
J18_0404B27: へたまはん事をと申けるに。師。微咲て。我は念佛
J18_0404B28: の行者也。豈武事にあづからんや。唯しる處は念佛
J18_0404B29: して。極樂に往生するのみなり。汝も後世のため
J18_0404B30: に。念佛をせよやと。の給ひつつ。鉦打敲て。念佛
J18_0404B31: し給ふを。つらつら見奉る時。豁然として劒法の妙
J18_0404B32: 處を悟れりとぞ。後に人にかたりて。われ曾て行
J18_0404B33: 者の念佛し給ふさまを見るに。分毫のすきまなく。
J18_0404B34: 一握の橦木をもて。千萬の敵にも。對すべく覺たり

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