浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0404A01: | らく。はじめ竊におもひけるは。我もし師の如く山居 |
J18_0404A02: | 修行したらんには。攝化衆生の道力も。やはか師に |
J18_0404A03: | はおとらじものをと。思ひたりき。それぞやがて高 |
J18_0404A04: | 慢の煩惱にてありけるが。忽に顯れしこそいとはづ |
J18_0404A05: | かしけれとて。其後は化他度生は。かならず還來を |
J18_0404A06: | 期すべき事に决しぬとぞ申ける。慢に七種九種あり |
J18_0404A07: | と。論には説給へり。いとおそるべき事にぞ有け |
J18_0404A08: | る。 |
J18_0404A09: | 文化のはしめ。鸞洲寮に寓せられしころ。高崎侯の |
J18_0404A10: | 藩に。寺田五右衞門といへる劒道の達人あり。師の |
J18_0404A11: | 名を聞。來りて十念を乞。舟は楫。扇は要と。師の詠 |
J18_0404A12: | せられたる歌を。殊の外に感佩して。多くの人に語 |
J18_0404A13: | しとぞ。其門人に。白井亨といへる人あり。後には |
J18_0404A14: | ならびなき劒道家なりとて。世には稱しあへり。こ |
J18_0404A15: | の人。諸國を經めぐりて。歸府したりし時。五右衞 |
J18_0404A16: | 門殊の外不興にて。汝が修行未精にいらずと呵しけ |
J18_0404A17: | ればいかさまに修行すべきかと問ければ。よき高僧 |
J18_0404B18: | なとに承問すべしと示しけり。亨。思らく。今の世 |
J18_0404B19: | に高僧と稱んものは。德本行者なるべし。いかなる |
J18_0404B20: | 事かあらんいでこころ見んものをとて取あへず出た |
J18_0404B21: | ちぬ。師はこの頃。攝州勝尾にいまして。亨の訪ひ |
J18_0404B22: | たる日は。十五日にてぞ有ける。師の説法し給へるさ |
J18_0404B23: | ま。何となく巍然として犯べからざるの氣象あり。 |
J18_0404B24: | 翌日謁見を乞て。我は劒客なり。高僧に逢たらん時 |
J18_0404B25: | 劒法の示を請よと。吾師のいはれしによりて。遙遙 |
J18_0404B26: | 訪奉れり。願くはしらせ給ふ事もましまさば。をし |
J18_0404B27: | へたまはん事をと申けるに。師。微咲て。我は念佛 |
J18_0404B28: | の行者也。豈武事にあづからんや。唯しる處は念佛 |
J18_0404B29: | して。極樂に往生するのみなり。汝も後世のため |
J18_0404B30: | に。念佛をせよやと。の給ひつつ。鉦打敲て。念佛 |
J18_0404B31: | し給ふを。つらつら見奉る時。豁然として劒法の妙 |
J18_0404B32: | 處を悟れりとぞ。後に人にかたりて。われ曾て行 |
J18_0404B33: | 者の念佛し給ふさまを見るに。分毫のすきまなく。 |
J18_0404B34: | 一握の橦木をもて。千萬の敵にも。對すべく覺たり |