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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0401A01: るなりけり。夫剃除は。華嚴經に讃ずる處。これを
J18_0401A02: 長ずるは涅槃のいましめなれば。三寶海に入もの。
J18_0401A03: 誰か沙門の正儀を守らざる事を得んや。近ごろ。師
J18_0401A04: のむかしの閑居獨處の顰にならひて。有髮に袈裟を
J18_0401A05: きたる法師どもの。俗間に遊行することあり。非儀
J18_0401A06: 非法のいたり。深いましむべきをや。
J18_0401A07: 同年の十一月。關東下向を催さる。宗門の規式なれ
J18_0401A08: ば。師家の傳法をも乞。かつは東漸の化益もなどお
J18_0401A09: ぼしけるより。東海道を經て。江戸に着せらる。小
J18_0401A10: 石川傳通院の鸞洲上人は。昔山居のをり。かねて契
J18_0401A11: おかせ給ひければ。やがて此寮を。留錫の處とは定
J18_0401A12: 給ひぬ。時の貫首君譽智嚴大和尚は。師の招ざるに
J18_0401A13: 來られしをよろこび。我爲の不請の友なりとて。同
J18_0401A14: 冬十二月。別に道塲をひらき。宗戒兩脈。および布
J18_0401A15: 薩の法式等。のこる處なく相承し給ふ。宗規の相傳
J18_0401A16: 畢て。貫首大和尚のいへらく。曾て聞。師。山居の
J18_0401A17: 際。兩祖の直授を得られたりと。願はくはこれを聞
J18_0401B18: んと。ここにおいて。師。掩事なく。感得の旨を述
J18_0401B19: らる。のぶる處。宗義の肝要を得て。代代相傳の旨
J18_0401B20: に符合せざる事なしとて。深く感られたり。相承の
J18_0401B21: 印信にとて。大和尚より。三卷書籍。並に宗祖大師
J18_0401B22: 眞筆の名號を。師に贈らる。大和尚。後に知恩院に
J18_0401B23: 住して。大僧正に任ぜらる。文化六年七月。入寂の
J18_0401B24: 前。師勝尾寺より。錫を飛し上洛して。臨終の御善
J18_0401B25: 知識をつとめられき。宿縁のひく處なるべしとて。
J18_0401B26: 人人尊びあへりけり。
J18_0401B27: 同じころ。一夜深更に十念を授給ふ聲の聞えけれ
J18_0401B28: ば。大基和尚和尚。常に師のかたはらをはなれず。説法のたびごとに。三歸の維那をつかさごれり。福智兼備の
J18_0401B29: 人也。後に傳通院學頭より。尾州建中寺に住し。賜紫の榮あり。年八旬にあまりて。今なほ建中寺の別坊に隱居せらるあや
J18_0401B30: しみて。師に尋奉りければ。いま老狐の來りたるに
J18_0401B31: 授たりきと申さる。そは當山の鎭守澤藏司明神の使
J18_0401B32: 者なるにやなど申ければ。さらば其社に行て法樂せ
J18_0401B33: ばやとて立出給ふ。更闌て人をおどろかさんもわづ
J18_0401B34: らはしとて。和尚みづから提灯てらし案内しまゐら

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