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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0400A01: のなし。其後は毎月十五日を定日となし。二階堂を
J18_0400A02: 道塲として。別時念佛をぞ執行せられける。
J18_0400A03: 師先頃坊の島にやすらはれける時。一天俄にかき曇
J18_0400A04: り疾雷一聲して。忽雲散ず。登山ののち第二日の
J18_0400A05: 夜。夢に黄牛を抱くと見給ふ。むかし開乘皇子。此
J18_0400A06: 山に住玉ひて。般若を書寫し給へりし時の。前兆に
J18_0400A07: 符合せるも。不思議なる事にぞ有ける。抑この寺は。
J18_0400A08: 善仲。善算の。現身往生の舊跡にて證如上人修焉の
J18_0400A09: 靈地なりとて。宗祖圓光大師も。この峰にて。四年
J18_0400A10: 籠居の勝蹟なり。師もかかるいはれのただならざる
J18_0400A11: より。年を重て。此には住給ひけるなるべし。
J18_0400A12: 琢定沙彌は。もとは尾州圓成寺の法弟なりしが。師
J18_0400A13: の道德に歸して松林庵に入衆してけり。或時。釋迦
J18_0400A14: 如來の尊像を刻。師に開眼を乞けるに。師見給て。
J18_0400A15: 此尊像いまだ螺髮ととのはずとの給ひければ。琢定
J18_0400A16: かしこまりて。其夜竊に螺髮を彫奉るとて。まづ御
J18_0400A17: 頂に墨をぬりけり。あけの朝。師。の給ひけるは。
J18_0400B18: 昨夜の夢に。汝。我頭に墨をぬりしとみたりきと。
J18_0400B19: 仰られけるを聞て。琢定全身に汗出て。師の内證の
J18_0400B20: ただならぬをかしこみ申ける。
J18_0400B21: 或人。師には一向に助業を用ひ給ふ事なきは。何の
J18_0400B22: 故ぞと問奉りければ。我とても助業は用るなり。汝
J18_0400B23: しらずや。大小の食と。大小の便とは。これ我らが
J18_0400B24: 念佛の助業也とぞ申されける。いとをかしかりける
J18_0400B25: 御示しなり。助業の事は。さまざまの相傳あること
J18_0400B26: なるを。この一轉語は。常格を超て。師の平生精修
J18_0400B27: のありさまを見るにたれり。
J18_0400B28: 享保三亥年十月。京都獅子が谷。法然院にて鬚髮を
J18_0400B29: そり。内衣を用られけり。出家の後。今に至るま
J18_0400B30: で。大方は山居巖棲を常とし。苦修練行。寸陰を惜
J18_0400B31: まれけるより。いつしか剪爪除髮の事さへ。はぶか
J18_0400B32: れけるを。この頃は。やや化他の因縁熟して。人氣
J18_0400B33: 近く住給ひけるにぞ。長髮長爪いかにも異相なり。
J18_0400B34: 沙門の正儀にあらずとて。眞の比丘形には復し給へ

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