浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0399A01: | 冬の初まで。此山に閑居して。御追善の別行せさせ |
J18_0399A02: | 給ひけり。師資の宿縁ただならざるより。念佛懇に |
J18_0399A03: | ものし給ふなん。當來の增進佛道もおもひやられ |
J18_0399A04: | て。いと尊かりけり。この頃けしかる神童二人。を |
J18_0399A05: | りをり繩床の傍に侍立して見えけるを。いづこより |
J18_0399A06: | か來れると尋玉ふに。我等は攝州應頂山に住るもの |
J18_0399A07: | 也と答たりとぞ。其後。勝尾寺に山居の刻。一切經 |
J18_0399A08: | 藏を拜せられしに。傅大士の左右の童子。容貌衣 |
J18_0399A09: | 服。さきごろの神童に少しも違ざりしと。いと不思 |
J18_0399A10: | 議なる事也けり。 |
J18_0399A11: | 享和元年十月廿三日の夕。例の行脚の志。涌が如く |
J18_0399A12: | おこりたるより竊に夜にまぎれて須ケ谷をのがれ出 |
J18_0399A13: | 給ひにけり。大路をゆかば。人の見とがむる事もこ |
J18_0399A14: | そとて忍びやかに。山路を經て。河内國より攝州に |
J18_0399A15: | 趣き。勝尾寺の麓なる。坊の島といへる處に至られ |
J18_0399A16: | けるに。何となく足痛の氣ありて。傍の石上に休ら |
J18_0399A17: | ひ給ふに。かねて見奉りし人なるべし。師は住よし |
J18_0399B18: | の行者にてはいまさずや。いかにしてとて。まづ十 |
J18_0399B19: | 念を乞申けり。これを始として。漸に人集り來りけ |
J18_0399B20: | るが。例の吉田の家族ども。其よし傳へ聞て。急御 |
J18_0399B21: | 迎に伺候す。師また此家にしばらく留錫し給ふをり |
J18_0399B22: | から。正覺院權僧都。勝尾寺の惣代として御迎に來 |
J18_0399B23: | られければ。十一月廿五日。初て應頂山へぞ登られ |
J18_0399B24: | ける。其時小池院權大僧都をはじめ。一山隨喜し |
J18_0399B25: | て。年久しく荒果たる松林庵を。新に修治して。師 |
J18_0399B26: | に供養し奉り。ながくこの山にとどまりて。化益を |
J18_0399B27: | 施し給へかしとぞ乞申されける。松林庵といへる |
J18_0399B28: | は。はつか。方十笏ばかりの淨室なり。東の方一二 |
J18_0399B29: | 級を下りて。隨侍の沙彌の。住べき坊一處を造れ |
J18_0399B30: | り。又下りて門を設く。これより内は。女人を禁制 |
J18_0399B31: | す。男子といへども。みだりに出入を許さず。溪澗 |
J18_0399B32: | 路を隔て。白雲峯を鎻し。松籟泉韵。とこしなへに |
J18_0399B33: | 常念我名の聲をたすく。されば。勝境に入もの。三毒 |
J18_0399B34: | の迷雲を拂はざるものなく。一念の佛種を植ざるも |