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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0398A01: がて脛を折。觜をたれて。いたく謹かたちをなせ
J18_0398A02: り。師直に十念を授給ひければ。御聲の度毎に。は
J18_0398A03: しを動し。十念を受奉るがごとし。ややありて。い
J18_0398A04: とうれしげに。羽たたきして。雲井遙に飛さりぬ。
J18_0398A05: 昔淨影大師の御寺に。鵞鳥のすみて。常に大師の御
J18_0398A06: 説法を。謹で聞けるさましたりと。德化の飛禽にお
J18_0398A07: よぶこと。古今これ同じきものか。
J18_0398A08: 智圓尼は。師の母堂なり。師の誕生のはじめより。
J18_0398A09: 一かたならぬ奇瑞をも。感見し給ひしかば。專心念
J18_0398A10: 佛の外。他事なかりけり。師は至孝の志ただならざ
J18_0398A11: るからに。山川遙に隔ながら。母堂の御爲に。日日
J18_0398A12: 十念授まゐらする事を。常例とはし給へり。喜平
J18_0398A13: 次。いま師のここに住せたまふを幸に。猶あかぬこ
J18_0398A14: ころより。母堂をも迎へまゐらせばやとおもひて。
J18_0398A15: 其よしこひ申ければ。母堂よろこびて。取あへず攝
J18_0398A16: 州に趣れけり。母子邂逅の對面。御よろこびいはん
J18_0398A17: かたなし。母堂のたまひけるは。まづ謝し申べき
J18_0398B18: は。上人は毎朝時も違はで。御十念授給はる事の。
J18_0398B19: うれしさよとぞ申されけるを。本勇かたはらに聞居
J18_0398B20: しが。後にその事いかにと問けるに。朝毎に。光明
J18_0398B21: の中に。師の十念の姿ををがみまゐらする也と答ら
J18_0398B22: れけり。喜平次。また此序をもて。母堂に京攝の靈
J18_0398B23: 地をも巡拜せさせんとて。本勇尼を添て出たたせ
J18_0398B24: ぬ。そのころも。朝毎に師の十念の相を拜せられし
J18_0398B25: は。おなじ事なりしとぞ。
J18_0398B26: 紀州前黄門太眞公より。仰言ありて。願くは。國内
J18_0398B27: いづれの山にても。心にまかせて勤らるべきよし。
J18_0398B28: 御使兩度に及ひしかば。師かしこまりて。攝州を
J18_0398B29: 去。再須が谷の庵にぞ歸られける。ことし。公の御
J18_0398B30: 母君淸心院殿かくれさせ給ひしかば。御菩提の爲に
J18_0398B31: とて。その御館を賜りて。須ケ谷の山に移改て。是
J18_0398B32: を師の庵室とはなさせ給へり。尊靈もとより師に厚
J18_0398B33: く御歸依ありしを。公もしろしめしけるより。御か
J18_0398B34: たみにもとおぼしめしたるなるべし。師。明のとしの

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