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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0395A01: 生育すべき。唯天地を恐れうやまひて念佛すべしと
J18_0395A02: 示されき。
J18_0395A03: 又或人の。口先ばかりにて。唱る念佛は。益なしと
J18_0395A04: いへるを聞玉ひて。さないひそ。口さきばかりに
J18_0395A05: て。念佛の申さるるならば。牛馬のくちにても申さる
J18_0395A06: べし。又酒がめの口にても。ふくべの口にても申さ
J18_0395A07: るべし。然にこれらの如きものは。もとより無心な
J18_0395A08: るもの。或は佛性有なからも。業障におほはれたる
J18_0395A09: より念佛は申されぬ也。人間にても。業障深きもの
J18_0395A10: は决して念佛は申されず。いま口先ばかりにても。
J18_0395A11: 念佛の申さるる人は。宿縁開發の人なりとぞの給ひ
J18_0395A12: ける。
J18_0395A13: 寬政十年八月。高野山をはじめとして。河内の國に
J18_0395A14: 行脚して。聖德太子の御廟を拜禮せらる。夫より攝
J18_0395A15: 州桑津の見性寺にて三日の間。留錫し給ふ。紀州を
J18_0395A16: 立出られしより。けふまでの道すがら。日課念佛を
J18_0395A17: 授たまふ事。幾千人といふ數をしらす。吳田の喜平
J18_0395B18: 次は。かねて師の家近く來らせ給よしを聞て。船ど
J18_0395B19: も用意し。大坂まで御迎にぞ出ける。御船の遙に見
J18_0395B20: ゆる頃は。道俗男女。雲霞の如く。磯邊に集ひたる
J18_0395B21: 中にも喜平次の家族は。正服にて伺候したりけり。
J18_0395B22: 御船既に岸につきければ。喜平次餘りの嬉しさに。
J18_0395B23: 正服のまま水中に飛入り。御船に手をかけ。陸地に
J18_0395B24: 引上奉りて。おのが西の別莊と申へぞ案内申ける。
J18_0395B25: 師ここにて七日別行せられけり。遠近の貴賤群聚い
J18_0395B26: ふばかりなし。これらの爲に。日日説法し給ひけれ
J18_0395B27: ば例の日課誓授のものも又幾千萬なる事をしらず。
J18_0395B28: やがて別行の限も果ければ。又紀州へ歸給ふべきよ
J18_0395B29: しを聞て喜平次。謹で申て。このごろは餘りにあわ
J18_0395B30: ただしくて。かしこくもかかる別莊におき奉りぬ。
J18_0395B31: 哀この後は。淸閑の地を撰びて。供養しまゐらせん
J18_0395B32: を願くはいやしき志を捨給はず。再來臨玉へかしな
J18_0395B33: ど。打くどき申けり。其のち。いく程なく。ふたた
J18_0395B34: びこの地へ移らせ玉ひたるは。この故なりけり。

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