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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0393A01: 對面許給はぬよし承るを。あはれ。いかにもして見
J18_0393A02: えさせ給へかしと。首途の初より。夜に晝に。其事
J18_0393A03: をのみぞ祈ける。漸にして須ケ谷の山につきぬ。結
J18_0393A04: 界の處にいたり見るに。竹墻ゆひ回して。折戸堅く
J18_0393A05: 鎻したり。父もこの處までは來らせ給へりしならん
J18_0393A06: を。今日はいかなる方便にてか見えまゐらせんな
J18_0393A07: ど。さまざまに思ひわづらひつつ。まづ聲うち上
J18_0393A08: て。津の國より遙に詣來しものなり。あはれ親しく
J18_0393A09: 拜謁許し給なんやと。高らかに乞ければ。かの優婆
J18_0393A10: 塞榮助聞とりて。けしかる事におもひつれど。まづ
J18_0393A11: 其よし師にきこえ申たるに。年月人に對面ゆるし給
J18_0393A12: はざる別行道塲なるを。けふは何とかおぼしとられ
J18_0393A13: けん。其人見んとぞ。の給ひける。喜平次は年頃御
J18_0393A14: 名を聞まゐらすさへ。いとなつかしかりしを。けふ
J18_0393A15: まのあたりをがみ奉る事の嬉しくて。五體を地に投
J18_0393A16: て。まづ幾度か拜し奉るにも。値遇結縁のただなら
J18_0393A17: ぬ事をさへ。おもひつづけられて。唯涙のみはふり
J18_0393B18: 落めり。さて十念を授與さられて後。汝は我に縁ふ
J18_0393B19: かき人なるべし。今より日課誓授すべしとの給ひけ
J18_0393B20: り。さらば三千遍をと申ければ。師。大に呵して六
J18_0393B21: 萬遍を誓べしとの玉へり。喜平次。大に驚て。さる
J18_0393B22: 勤は身に及候はじをと辭しければ。師重ていやと
J18_0393B23: よ。今より我精神を汝に加して。そのつとめ成就せ
J18_0393B24: さすべければ。心を安くして。誓べしとの玉ふに
J18_0393B25: ぞ。いまはいなみがたくて。遂に六萬遍を誓受し
J18_0393B26: き。かくて因果必然の理ども經文を引て敎喩し玉ふ
J18_0393B27: さま。慈心言端に溢れ。尊さいはんかたなし。その
J18_0393B28: かみ須達長者の。始て世尊に見え奉りしありさまに
J18_0393B29: も。をさをさおとらじをなど。推はからるるにも。
J18_0393B30: いと殊勝にこそ。夏の日もけふはことさらに短て。
J18_0393B31: 夕陽早く西に傾きぬ。かくてしもあるべきにあらね
J18_0393B32: ば。つとめて御いとま申て。山をなん下りける。こと
J18_0393B33: し秋の末。師河内より攝州に行脚し給ひて。吉田氏
J18_0393B34: に寓し給へるも。けふの結縁ぞ其基とはなれるなる

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