浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0393A01: | 對面許給はぬよし承るを。あはれ。いかにもして見 |
J18_0393A02: | えさせ給へかしと。首途の初より。夜に晝に。其事 |
J18_0393A03: | をのみぞ祈ける。漸にして須ケ谷の山につきぬ。結 |
J18_0393A04: | 界の處にいたり見るに。竹墻ゆひ回して。折戸堅く |
J18_0393A05: | 鎻したり。父もこの處までは來らせ給へりしならん |
J18_0393A06: | を。今日はいかなる方便にてか見えまゐらせんな |
J18_0393A07: | ど。さまざまに思ひわづらひつつ。まづ聲うち上 |
J18_0393A08: | て。津の國より遙に詣來しものなり。あはれ親しく |
J18_0393A09: | 拜謁許し給なんやと。高らかに乞ければ。かの優婆 |
J18_0393A10: | 塞榮助聞とりて。けしかる事におもひつれど。まづ |
J18_0393A11: | 其よし師にきこえ申たるに。年月人に對面ゆるし給 |
J18_0393A12: | はざる別行道塲なるを。けふは何とかおぼしとられ |
J18_0393A13: | けん。其人見んとぞ。の給ひける。喜平次は年頃御 |
J18_0393A14: | 名を聞まゐらすさへ。いとなつかしかりしを。けふ |
J18_0393A15: | まのあたりをがみ奉る事の嬉しくて。五體を地に投 |
J18_0393A16: | て。まづ幾度か拜し奉るにも。値遇結縁のただなら |
J18_0393A17: | ぬ事をさへ。おもひつづけられて。唯涙のみはふり |
J18_0393B18: | 落めり。さて十念を授與さられて後。汝は我に縁ふ |
J18_0393B19: | かき人なるべし。今より日課誓授すべしとの給ひけ |
J18_0393B20: | り。さらば三千遍をと申ければ。師。大に呵して六 |
J18_0393B21: | 萬遍を誓べしとの玉へり。喜平次。大に驚て。さる |
J18_0393B22: | 勤は身に及候はじをと辭しければ。師重ていやと |
J18_0393B23: | よ。今より我精神を汝に加して。そのつとめ成就せ |
J18_0393B24: | さすべければ。心を安くして。誓べしとの玉ふに |
J18_0393B25: | ぞ。いまはいなみがたくて。遂に六萬遍を誓受し |
J18_0393B26: | き。かくて因果必然の理ども經文を引て敎喩し玉ふ |
J18_0393B27: | さま。慈心言端に溢れ。尊さいはんかたなし。その |
J18_0393B28: | かみ須達長者の。始て世尊に見え奉りしありさまに |
J18_0393B29: | も。をさをさおとらじをなど。推はからるるにも。 |
J18_0393B30: | いと殊勝にこそ。夏の日もけふはことさらに短て。 |
J18_0393B31: | 夕陽早く西に傾きぬ。かくてしもあるべきにあらね |
J18_0393B32: | ば。つとめて御いとま申て。山をなん下りける。こと |
J18_0393B33: | し秋の末。師河内より攝州に行脚し給ひて。吉田氏 |
J18_0393B34: | に寓し給へるも。けふの結縁ぞ其基とはなれるなる |