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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0388A01: 暫念佛し居らるるに。巨大なる鰻魚の如もの。名號
J18_0388A02: をくちにふくみて。浮出たるが。やがて死してけ
J18_0388A03: り。あはれ名號加持の力。はやくも龍身を轉じたる
J18_0388A04: にやとぞ申されける。須彌藏經に。龍報に五種の不
J18_0388A05: 同ある事を説玉ふ中に。婆樓那龍王のつかさどる所
J18_0388A06: は。一切魚形の龍神なりと見ゆ。いまの鰻魚に似た
J18_0388A07: るは。果して其屬類なるべきにこそ。
J18_0388A08: 鹽津近きわたりに。三郷の八幡とて神祠あり。或
J18_0388A09: 時。神靈。比丘形にして現れ給ひ。師に告ての玉は
J18_0388A10: く。諸人さまざまの事いのるによりて。いと心苦
J18_0388A11: し。幸に師の法力を得て。威光を倍增せんとすとの
J18_0388A12: 給ひき。是より後。をりをり神前にいたり。十念を
J18_0388A13: 稱へ法樂し給けり。ある夜大神。明日なん齋食供養
J18_0388A14: すべきよし告給へり。翌日いづこの人ともなく。齋
J18_0388A15: 食をもたらし來りぬ。師かたじけなく受給ひ。齋後
J18_0388A16: 即御禮に詣てて神前を見玉ふに。うやうやしく備た
J18_0388A17: る供御の菜羮調理。すべてさきに師のもとに。供養
J18_0388B18: ありしにたがはざりけり。
J18_0388B19: 同年十一月のころ。或夜半ばかりにいざ今より吉野
J18_0388B20: 山の奧にて。修行せばやとの玉ひ。錫杖とりて庵を
J18_0388B21: 立出らる。此時は。現定鸞洲の二師ぞ隨侍し給へ
J18_0388B22: り。本名。本勇二人の尼も此よし傳へ聞て。御あと
J18_0388B23: を追けり。加茂谷の岩屋のほとりに到給ふに。いま
J18_0388B24: だ夜深ければ。暫休息せばやとて。傍なる小社の柱
J18_0388B25: によりかかり居給へり。尼どもあへぎあへぎここにて
J18_0388B26: 追つき奉りけるに。いたく勞れてければ。本勇はわ
J18_0388B27: れにもあらで。しばしまどろみぬ。頻に異香の薰じ
J18_0388B28: たるにおどろきて。あたりを見るに。大身の阿彌陀
J18_0388B29: 佛。光明赫灼として。社の柱により居ますを拜み奉
J18_0388B30: る。本勇あまりに驚ておもはずも。石檀を三階ばか
J18_0388B31: り。轉おちながら。大聲にて南無阿彌陀佛と唱へた
J18_0388B32: るを。師。何事ぞとの給ひければ。しかじかのよし
J18_0388B33: きこえ申たるに。やがて淨土にて見る事有べし。あ
J18_0388B34: なかしこ。さる事人になかたりそとの給ひける。御

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