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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0385A01: 將に大師によりて。乞戒の方便を祈らんとて。七日
J18_0385A02: の別行を開闢せらる。此際に日輪。大虚に徧滿せる
J18_0385A03: を見。また天華亂墜せるを見給ふ。結願の朝。何も
J18_0385A04: ののもて來けん。經机の上に。梵網經一卷あり。師始
J18_0385A05: てこの經を見給ひて。歡喜いはん方なし。後後にも
J18_0385A06: 此事をかたらせ玉ふごとに。今ありしやうに。身を
J18_0385A07: 動搖して。よろこびの色。面に顯れ給へり。他日。
J18_0385A08: 南都北室院の叡辨和上。洛東西光寺の慈雲和上に。
J18_0385A09: この事をかたられしに。そはこよなき好相にて。ま
J18_0385A10: さしく得戒し給ひし也と。證明せられき。
J18_0385A11: 寬政三年十二月の頃。或朝より。あらしはげしく吹
J18_0385A12: 雪いたく降て庵のうちさへ堪べくもあらぬ日。こよ
J18_0385A13: ひは來人もなくていと靜なり。いざつとめむとて。
J18_0385A14: 例の但三衣のさまにて。念佛し給ふに。徧身汗流れ
J18_0385A15: て。繩床に滴ばかり也。善導寺大師の。寒夜に汗を
J18_0385A16: 流し給しよし承るも。昔のみにはあらざりけり。こ
J18_0385A17: の頃はいつも線香のみを供じて。燈明はなかりつる
J18_0385B18: を。今宵は二更のころより。庵の中。光わたり。宛
J18_0385B19: 晝の如なりにけり。師の姉と本勇尼とは。はやくよ
J18_0385B20: り詣來て。幸にこの勝相を感見せしとぞ。
J18_0385B21: 同五年の夏より秋にいたるまで。雨聊も降ざりけれ
J18_0385B22: ば。國内の寺社に仰ごと有て。請雨の祈禱を修せし
J18_0385B23: め給へり。師は其ころ。鹽津の谷山の庵にいました
J18_0385B24: るに。衆人詣來て。請雨の祈願をなし給ん事を。乞
J18_0385B25: 申しければ。師答曰。我世を遁て。唯後世菩提を
J18_0385B26: 修す。風雨以時の利益は。おのづから其中にあり。
J18_0385B27: いま別に修する事を用るに及じと示されけれども。
J18_0385B28: 諸人の歎大かたならざるよし。強て申ければ。さら
J18_0385B29: ばとて。豆の粉を。食料に備しめ。我今より請雨の
J18_0385B30: 驗得てんまでは。誓てこの坐をたたじとて。其曉よ
J18_0385B31: り道塲に入て。念佛を修せらる。かくて其日の申の刻
J18_0385B32: ばかりに。俄に雷なり。雲覆て。雨おびただしくぞ
J18_0385B33: 降ける。しかれども。半時ばかりにして。一天をも
J18_0385B34: との如晴わたりぬ。師のいへらく。此たびの旱魃

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