浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0384A01: | たづねて。遂に四箇の石を得て。千津川へ持歸り |
J18_0384A02: | ぬ。藤井の里に石工何がしといへるものあり。その |
J18_0384A03: | 頃千津川の村長より。名號塔彫刻の事あつらへしを |
J18_0384A04: | うけがひて。其石の來べき日をまち居たりしに。あ |
J18_0384A05: | る曉がた。表に人の聲して。名佛塔の石。持來りた |
J18_0384A06: | るぞ。急て彫つけよといふ。夜明て見るに。戸外に |
J18_0384A07: | 三尺ばかりの巨石あり。いそぎてといひつるをとて。 |
J18_0384A08: | 近き寺の法師に。名佛かかせて。まづ南無の二字を |
J18_0384A09: | ぞゑりつけにける。此朝。千津川の村人。石工のも |
J18_0384A10: | とへ四箇の石を持來りて。名號塔は是なるぞ。いそ |
J18_0384A11: | ぎてといふ。石工いぶかしみて。石はこの曉にぞ持 |
J18_0384A12: | 來りませるをといへるに。村人も驚つつかの石を |
J18_0384A13: | 見るに。早藤の谷にて初に得しかど。小瑕ありと |
J18_0384A14: | て捨たるにぞありける。こは如何に師の道德を慕ひ |
J18_0384A15: | て。石のおのづから飛來りしにやあるらんとて。そ |
J18_0384A16: | の事師に告ければ。師見給ひて。我に縁ふかき石な |
J18_0384A17: | らんとのたまひ十念授玉ひて。さきに石工が法師 |
J18_0384B18: | にかかせて。彫かかりし六字の中。阿字のつくり |
J18_0384B19: | の。可字の畫より下を書繼せ給ひて。其を彫らせ |
J18_0384B20: | て。落合谷にぞ建られける。今も書繼の塔といひ傳た |
J18_0384B21: | る是なり。或夜。風雨おびたたしかりしが其あけの |
J18_0384B22: | 朝。この書繼の名號塔。いづくともなく見えずなり |
J18_0384B23: | けり。人人擧て尋求たるに。おなし谷の中に。師の |
J18_0384B24: | 住捨し庵の有けるが。戸ざしはもとのままにて。こ |
J18_0384B25: | の石その内にありて。巋然としてたてりけり。いか |
J18_0384B26: | なれば一たびならず二たたびまで。かかる不思議を |
J18_0384B27: | 見する事よとて。師にしかじかのよしきこえけれ |
J18_0384B28: | ば。凡夫の極樂に往生するは。石のおのづから飛來 |
J18_0384B29: | よりも。不思議なりとぞの給ひける。 |
J18_0384B30: | 師竊におもへらく。戒は佛法の壽命。三學の基本な |
J18_0384B31: | り。いやしくも。沙門たるもの。誰か一日も戒法な |
J18_0384B32: | き事を得んや。况菩薩の戒法は。天龍八部に及と |
J18_0384B33: | 聞。我人身を受たり。豈異類に遜せんや。曾きく。 |
J18_0384B34: | 善導大師は。戒法を護持して纖毫も犯せずと。今 |