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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0384A01: たづねて。遂に四箇の石を得て。千津川へ持歸り
J18_0384A02: ぬ。藤井の里に石工何がしといへるものあり。その
J18_0384A03: 頃千津川の村長より。名號塔彫刻の事あつらへしを
J18_0384A04: うけがひて。其石の來べき日をまち居たりしに。あ
J18_0384A05: る曉がた。表に人の聲して。名佛塔の石。持來りた
J18_0384A06: るぞ。急て彫つけよといふ。夜明て見るに。戸外に
J18_0384A07: 三尺ばかりの巨石あり。いそぎてといひつるをとて。
J18_0384A08: 近き寺の法師に。名佛かかせて。まづ南無の二字を
J18_0384A09: ぞゑりつけにける。此朝。千津川の村人。石工のも
J18_0384A10: とへ四箇の石を持來りて。名號塔は是なるぞ。いそ
J18_0384A11: ぎてといふ。石工いぶかしみて。石はこの曉にぞ持
J18_0384A12: 來りませるをといへるに。村人も驚つつかの石を
J18_0384A13: 見るに。早藤の谷にて初に得しかど。小瑕ありと
J18_0384A14: て捨たるにぞありける。こは如何に師の道德を慕ひ
J18_0384A15: て。石のおのづから飛來りしにやあるらんとて。そ
J18_0384A16: の事師に告ければ。師見給ひて。我に縁ふかき石な
J18_0384A17: らんとのたまひ十念授玉ひて。さきに石工が法師
J18_0384B18: にかかせて。彫かかりし六字の中。阿字のつくり
J18_0384B19: の。可字の畫より下を書繼せ給ひて。其を彫らせ
J18_0384B20: て。落合谷にぞ建られける。今も書繼の塔といひ傳た
J18_0384B21: る是なり。或夜。風雨おびたたしかりしが其あけの
J18_0384B22: 朝。この書繼の名號塔。いづくともなく見えずなり
J18_0384B23: けり。人人擧て尋求たるに。おなし谷の中に。師の
J18_0384B24: 住捨し庵の有けるが。戸ざしはもとのままにて。こ
J18_0384B25: の石その内にありて。巋然としてたてりけり。いか
J18_0384B26: なれば一たびならず二たたびまで。かかる不思議を
J18_0384B27: 見する事よとて。師にしかじかのよしきこえけれ
J18_0384B28: ば。凡夫の極樂に往生するは。石のおのづから飛來
J18_0384B29: よりも。不思議なりとぞの給ひける。
J18_0384B30: 師竊におもへらく。戒は佛法の壽命。三學の基本な
J18_0384B31: り。いやしくも。沙門たるもの。誰か一日も戒法な
J18_0384B32: き事を得んや。况菩薩の戒法は。天龍八部に及と
J18_0384B33: 聞。我人身を受たり。豈異類に遜せんや。曾きく。
J18_0384B34: 善導大師は。戒法を護持して纖毫も犯せずと。今

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