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J2750 徳本行者伝 行誡 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0383A01: の粉一合をもて一日の食料と定めらる。師の避糓斷
J18_0383A02: 鹽の苦行は。山居巖棲の際。事の煩はしきを省の方
J18_0383A03: 便なるのみ。後の人これを學んで異をあらはし。衆
J18_0383A04: を惑はすものあり。師の罪人といふべし。
J18_0383A05: 千津川の草庵におはしし時。倚子の下に鼠の巢を作
J18_0383A06: り子あまた産たる事あり。又ある時。倚子の傍より
J18_0383A07: 蛇出たり。平生蚊虻の類。膚を喘と雖。絶て厭ひは
J18_0383A08: らひ給ふ事なかりき。慈愛の廣くものに及べる。古
J18_0383A09: にも恥ざるべきをや。
J18_0383A10: 千津川の苦行も。六年ばかりなるべし。今は行脚せ
J18_0383A11: ばやと思れしかば。寬政三年十月の頃。この地を立出
J18_0383A12: て。同郡。萩原村を過るに。邑中の男女。師の袂に
J18_0383A13: すがりて。あはれここに止らせ給て。我らが後世助
J18_0383A14: させ給へなど。懇にこひ申ければ。さらばとて。此
J18_0383A15: 村の谷のおくに。かたばかりの草庵を結給ひけり。
J18_0383A16: 邨中の男女。晝は農業にいとまなき故秉燭ごろよ
J18_0383A17: り。老若多つどひ來て。念佛す。人歸去て後。その
J18_0383B18: わたり二里ばかりの間を。毎夜遊行念佛せらる。そ
J18_0383B19: は。行脚のこころざしを果さんとなるべし丸山とい
J18_0383B20: へる處は。むかし湯河直春の籠たりし城趾なり。い
J18_0383B21: と峻嶮坂を攀て。ねんごろに回向せられたりき。こ
J18_0383B22: の城山のあたり。雨そぼふる夜は。しばしば陰火のも
J18_0383B23: えたりしに。師の回向せられてのちは。其事やみた
J18_0383B24: りとぞ。あはれ遊魂の得脱してげるならんと。人人
J18_0383B25: 申あへりき。
J18_0383B26: 一とせ。千津川のあたり。疫病流行しければ。師。
J18_0383B27: ゆきて。里人に念佛せよとすすめらる。かかる功德
J18_0383B28: にやよりけん。行疫退散して。病者悉く平癒す。村
J18_0383B29: 長等相議して。師の年ごろここに修行し給ひししる
J18_0383B30: しにも。かつは向後かかる病難なからん禱のために
J18_0383B31: も。名號塔を乞得て。この村の四隅に建てばやと
J18_0383B32: て。人人心をあはせ。塔に造るべき石を。早藤村に
J18_0383B33: 搜索しに。其河の邊によろしき石ひとつ見出した
J18_0383B34: り。されどもいささか瑕ありければ。これを措て。猶

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