浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0307A01: | して。實に今師敎導の餘澤なり。 |
J18_0307A02: | 師此寺に住持せられしは。老父孝養のためなりし |
J18_0307A03: | に。既に往生せられし故。今は速に退院すべしと |
J18_0307A04: | て。その翌年戊寅正月廿五日。元祖大師の御忌を勤 |
J18_0307A05: | 修し。法話をなして諸人に別れをつげ。直に寺を出 |
J18_0307A06: | られしに。諸人皆父母にはなるるがごとく。別れを |
J18_0307A07: | 惜みてかなしみなげくさま。いとあはれなりけり。 |
J18_0307A08: | その中に壯年の二男二女あり。時にあたりて發心し |
J18_0307A09: | て。海邊にてみづからもとどりを斷て。其志をあらは |
J18_0307A10: | しけるが。それより浮世をいとふ思ひ深く。淨土を |
J18_0307A11: | 願ふ心彌增にして。年經て後。ともに出家の素志を |
J18_0307A12: | 遂たり。およそこれらをもて。師のいたる所。化導 |
J18_0307A13: | の盛なりしことはかり知ぬべし。師それより。京師 |
J18_0307A14: | 華頂山に登り。信冏上人を吹擧して。淨光寺の席を補 |
J18_0307A15: | はしめ。みづからは所所に遊歷して。學業を勵み。 |
J18_0307A16: | 修行を勇進せらる。 |
J18_0307A17: | 明和三年。丙戌夏。洛東獅ケ谷。法然院。住僧を闕 |
J18_0307B18: | ければ。華頂山前大僧正。順眞尊者隱室にましまし |
J18_0307B19: | けるが。師を推出し給ひければ。大衆法親等ともに |
J18_0307B20: | 懇請せしに。廬山の遺風を復び興さばやと思はれけ |
J18_0307B21: | れば。やがて請に應ぜられて。六月十七日進山せら |
J18_0307B22: | れしかども。いささか意に愜ぬことのありしかば。 |
J18_0307B23: | さらぬことに托して。同年十一月二日に。忽ち寺を |
J18_0307B24: | 退かれしを。老隱智了和尚いさめて。夏にして住持 |
J18_0307B25: | し秋にして退去せられんは。餘りに輕輕しなど。さ |
J18_0307B26: | りがたく聞えしに。師云。我聞く淨土の莊嚴は。寶 |
J18_0307B27: | 殿逐身飛とかや。しかも此松徑竹關の寺。いかでか |
J18_0307B28: | 我身を逐ふことを得んや逐ざるもまたよしと笑ひてさ |
J18_0307B29: | れり。其後宮島光明院檀越。京にのぼりて。師を請 |
J18_0307B30: | じければ。その地先に遊びて。以八。猒求などの。 |
J18_0307B31: | 古德の跡なつかしく。且山淸く海朗にして。觀境心 |
J18_0307B32: | すみぬべしと。師の素志にかなひければ。すなはち |
J18_0307B33: | かしこにいたりて住職せらる。かくて數年の後。上 |
J18_0307B34: | 足俊峯に寺職をとらしめ。みづからは隱寮加祐軒に |