浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0306A01: | 念佛して。その母に回向したまふこと。ことに懇 |
J18_0306A02: | 切なりけり。ある時慧滿にかたりていはく。都て女 |
J18_0306A03: | 人は愛執殊に深くして。容易に得脱しがたきもの |
J18_0306A04: | 也。我母をしばしば。夢に見るに。いつもくるしき |
J18_0306A05: | 體なり。これによりて。日日誦經念佛して回向せし |
J18_0306A06: | 故にや。近來漸く善處に轉生せられしか。夢に見る |
J18_0306A07: | ごとに。いつにても歡喜のありさまに見へぬれば。 |
J18_0306A08: | すこしは我心もやすく思ふなりとて。隨喜せられけ |
J18_0306A09: | り。 |
J18_0306A10: | 評云。世出世の孝。ふたつながらを全くする事。 |
J18_0306A11: | 古人といへども難とする所なり。さるに今師。こ |
J18_0306A12: | れをかね全ふせられしは。うらやましきことなら |
J18_0306A13: | ずや。唐土の陳尊宿。我朝の元政上人などの類に |
J18_0306A14: | も恥ざるべしと。いと有難く覺侍る |
J18_0306A15: | 師此寺にありて。彌陀本願の難遭なる旨口稱念佛の |
J18_0306A16: | 易行なる趣を。敎諭せられしかば。一島こぞりてそ |
J18_0306A17: | の化導に隨ふことあたかも草の風になびくがごと |
J18_0306B18: | く。大かた皆深く因果の道理を信じ。願生淨土の志 |
J18_0306B19: | を生じ。日課念佛を誓約して勤修せり。 |
J18_0306B20: | 直道といへる發心者あり。一文不知のものなりけれ |
J18_0306B21: | ども。深く師の敎を信じて勇猛に念佛して三昧を發 |
J18_0306B22: | 得し。種種未曾有の好相を感見し。猒離の心涌がご |
J18_0306B23: | とく。遂に遺身往生せり。これ偏に師の化導の力な |
J18_0306B24: | り。其事狀は別に圖を附して。今玆これを梓にきざ |
J18_0306B25: | めり。つぶさにかれをひらきて見るべし |
J18_0306B26: | 初め此島に。加摩羅疾を煩ふ者。常に數多ありて斷 |
J18_0306B27: | ざりしに。師ここに來りて念佛を弘通されしより。 |
J18_0306B28: | 彼惡疾をうくるものたえて一人もなくなりにけり。 |
J18_0306B29: | 今にいたるまで。四五十年を經れども。ふたたび彼病 |
J18_0306B30: | を得たるものなし。島中の風儀となりて。送葬。追善 |
J18_0306B31: | 及び。諸諸の佛事作福。殷重如法なる事。他境には類 |
J18_0306B32: | すくなし。今にいたりて變改せず。かかれば存亡殘ら |
J18_0306B33: | ず攝取の光益を蒙り。往生はさらにいはず。斯不求自 |
J18_0306B34: | 得の現益を得るなるべしこれ彌陀大悲不共の利益に |