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J2730 学信和尚行状記 慧満・僧敏 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0306A01: 念佛して。その母に回向したまふこと。ことに懇
J18_0306A02: 切なりけり。ある時慧滿にかたりていはく。都て女
J18_0306A03: 人は愛執殊に深くして。容易に得脱しがたきもの
J18_0306A04: 也。我母をしばしば。夢に見るに。いつもくるしき
J18_0306A05: 體なり。これによりて。日日誦經念佛して回向せし
J18_0306A06: 故にや。近來漸く善處に轉生せられしか。夢に見る
J18_0306A07: ごとに。いつにても歡喜のありさまに見へぬれば。
J18_0306A08: すこしは我心もやすく思ふなりとて。隨喜せられけ
J18_0306A09: り。
J18_0306A10: 評云。世出世の孝。ふたつながらを全くする事。
J18_0306A11: 古人といへども難とする所なり。さるに今師。こ
J18_0306A12: れをかね全ふせられしは。うらやましきことなら
J18_0306A13: ずや。唐土の陳尊宿。我朝の元政上人などの類に
J18_0306A14: も恥ざるべしと。いと有難く覺侍る
J18_0306A15: 師此寺にありて。彌陀本願の難遭なる旨口稱念佛の
J18_0306A16: 易行なる趣を。敎諭せられしかば。一島こぞりてそ
J18_0306A17: の化導に隨ふことあたかも草の風になびくがごと
J18_0306B18: く。大かた皆深く因果の道理を信じ。願生淨土の志
J18_0306B19: を生じ。日課念佛を誓約して勤修せり。
J18_0306B20: 直道といへる發心者あり。一文不知のものなりけれ
J18_0306B21: ども。深く師の敎を信じて勇猛に念佛して三昧を發
J18_0306B22: 得し。種種未曾有の好相を感見し。猒離の心涌がご
J18_0306B23: とく。遂に遺身往生せり。これ偏に師の化導の力な
J18_0306B24: り。其事狀は別に圖を附して。今玆これを梓にきざ
J18_0306B25: めり。つぶさにかれをひらきて見るべし
J18_0306B26: 初め此島に。加摩羅疾を煩ふ者。常に數多ありて斷
J18_0306B27: ざりしに。師ここに來りて念佛を弘通されしより。
J18_0306B28: 彼惡疾をうくるものたえて一人もなくなりにけり。
J18_0306B29: 今にいたるまで。四五十年を經れども。ふたたび彼病
J18_0306B30: を得たるものなし。島中の風儀となりて。送葬。追善
J18_0306B31: 及び。諸諸の佛事作福。殷重如法なる事。他境には類
J18_0306B32: すくなし。今にいたりて變改せず。かかれば存亡殘ら
J18_0306B33: ず攝取の光益を蒙り。往生はさらにいはず。斯不求自
J18_0306B34: 得の現益を得るなるべしこれ彌陀大悲不共の利益に

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