ウィンドウを閉じる

J2710 関通和尚行業記 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0269A01: もごろに遺告して。八月二十八日遂に尾州を發錫せ
J18_0269A02: らる。道俗名殘ををしむさま理りに過たり。九月朔
J18_0269A03: 日京師轉輪寺に到著せらる。其のちも氣色煩らはし
J18_0269A04: けれど。時時法義を談じ。敎導勸誡せられける。
J18_0269A05: 大和國。三輪の里の男女。因縁ありて師を嚮慕しけ
J18_0269A06: るにや。彼さとの極樂寺主。年來きたりて師の有縁
J18_0269A07: を度せられんことを請じ。去年師の尾陽に止寓せら
J18_0269A08: るる頃も。彼國にきたり。ひたすら請はれければ。
J18_0269A09: 明年上洛の序に行べきよし約諾せられき。師丹心利
J18_0269A10: 生に切なりしゆゑ。病惱の身を顧見ず。十月朔轉輪
J18_0269A11: 寺を發して。和州に趣かる。轉輪寺主眞海。此ほど
J18_0269A12: ここち例ならずありしが。此度はいたく名殘を惜
J18_0269A13: み。疾を力めて強て師の後につき添ひ。遠く見送
J18_0269A14: り。慇懃に訣を述て歸られけり。かくて師。三輪極
J18_0269A15: 樂寺に著き。旅の疲勞もいとはず。日日敎勸せられ
J18_0269A16: ける。さて眞海は師を見送り。歸りてより病惱急に
J18_0269A17: 重り。同月五日の午の剋正念に終りを遂らる。此よ
J18_0269B18: し師の許に告來りければ。師また三輪のさとを發し
J18_0269B19: て。同七日轉輪寺に歸著し。勞れいとまさりけれど
J18_0269B20: も侍者に助けられて。眞海の葬儀の導師を唱へられ
J18_0269B21: けり。
J18_0269B22: 師これより服食日日に减じ。遂に床に臥されけり。
J18_0269B23: 年すでに暮て。臘月晦日の日沒。恒例別行の開白お
J18_0269B24: よび。正月八日の日中の回向にも。師殿堂の佛前に
J18_0269B25: 詣で。法要を宣揚し。ちなみに穢土の訣れを告ら
J18_0269B26: る。師所勞のよし。雲上に聞えければ忝くも。
J18_0269B27: 大聖后より。醫療の令命ありけれども。師すべて藥
J18_0269B28: は服せられず。しかれども病惱次第に快復せるがご
J18_0269B29: とく。身心安適に見へけれは。全快のこともあらん
J18_0269B30: かと。看侍のものをはしめ皆喜びあひたりしに。同
J18_0269B31: く二十三日門人等をあつめていはく。病苦は悉く消
J18_0269B32: 除して。身心ともに安穩なれども。命終の期は近き
J18_0269B33: にありとおほゆれば。今日汝等がために。聊要義を
J18_0269B34: 遺示せんとおもふなり。抑師となり弟子となり。同

ウィンドウを閉じる