浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0260A01: | につのらず。初より淨財餘分ありて。事事みな勢の |
J18_0260A02: | せまるところにおいてこれをなす。しかありてその |
J18_0260A03: | 動作工夫悉く人をしてこれをなさしめ。必ずみづか |
J18_0260A04: | らははからず。落成ののちも。主をたてて寺職にあ |
J18_0260A05: | づからしめ。われはただ客位にあり。かくのごとく |
J18_0260A06: | してすら。なほ常に衆惱をうけ。自行を損ずること少 |
J18_0260A07: | からず。况や心力を盡して。これをなし。みづから |
J18_0260A08: | 事をはからんや。われ現に此失をしる。此こと必ずお |
J18_0260A09: | もひとまりたまへとぞ答へらる。又ある夜。師に問ひ |
J18_0260A10: | 申されけるは。不思議の因縁によりて親く慈敎を蒙 |
J18_0260A11: | り。往生の安心を决しぬ。歸國ののちは。慈恩を報 |
J18_0260A12: | んがために。時時はまた人をも敎導せばやとおもひ |
J18_0260A13: | 侍る。それにつき人のために法を説んには。別に心得 |
J18_0260A14: | べきことも候ふやらん。またいかやうに説聞せ候べき |
J18_0260A15: | や。師答ていはく。足下なにとぞ説法度生を廢し |
J18_0260A16: | て。單に自行を勵ましたまへ。佛道修行は自己の機 |
J18_0260A17: | 分を鑑るが大事に候ほどに。よくよく自身をかへり |
J18_0260B18: | 見て。進退せらるべきなり。元祖大師鹽飽の入道西 |
J18_0260B19: | 忍に示して。不輕大士の杖木瓧石の難を忍びて。四 |
J18_0260B20: | 衆の縁を結びたまひし事をもて。いかなる謀をめぐ |
J18_0260B21: | らしても。人をすすめて念佛せしめ給へと。仰せら |
J18_0260B22: | れしことあれども。これは大師時に應し。機にあたり |
J18_0260B23: | ての一途の御敎訓にして。いまだ必しも一切念佛の |
J18_0260B24: | 行者に通ずる御示にては候はず。予はいささか意願 |
J18_0260B25: | のことありて。及ずなから彼大師一途の御示しを心に |
J18_0260B26: | 護りて退轉なく。弘法利生し侍るなり。さればこれ |
J18_0260B27: | を必しも軌にし。學びたまふべきにあらず。ただ今 |
J18_0260B28: | のさまにて。一期道心退轉することなく。日日に稱名 |
J18_0260B29: | を策勤して。決定順次に往生を遂げたまはば。予が |
J18_0260B30: | よろこび。なににか比せん。たとひ今生には。半箇 |
J18_0260B31: | 一人を化導せずとも。此度わがみだに極樂に生れ |
J18_0260B32: | ば。佛祖の慈恩父母衆生の恩まで。悉く報しつくす |
J18_0260B33: | 事にてあるなり。其故は。彼國に往生すれば。必ず |
J18_0260B34: | 悲智ふたつながら具足し。二利ともに成熟す。しか |