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J2710 関通和尚行業記 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0259A01: 中に。ある夜能圓和尚。師に申されけるは。尾州と
J18_0259A02: いひ京都といひ。その外所所に。よき道塲營構あり
J18_0259A03: て。衆多くあつり如法に勤修のこと。奧羽二州の邊ま
J18_0259A04: で。傳へ聞く人みな隨喜し奉るなり。師にも定て滿
J18_0259A05: 足におぼしめし候ひつらん。其につき小子もなにと
J18_0259A06: ぞ本國において一宇を營構し。師の座下より四五輩
J18_0259A07: 招て共住勤行し。師の影像を奉して遺跡に擬し。い
J18_0259A08: ささか慈恩にむくひ奉らばやと。申されければ。師答
J18_0259A09: ていはく。おほよそわれを賞したまはる人も吾が處
J18_0259A10: 處に精舍を建立せるを。佛門の光榮なりと讃歎せら
J18_0259A11: るるにすぎざるにや。わが意は全くしからず。夫一
J18_0259A12: 人の往生は。實に一有情の成佛なり。よく一人を化
J18_0259A13: し得る。其功まことに無盡不可思議なり。しかるに。
J18_0259A14: 偏に佛祖の加被護念によりて。われに隨ひて法をき
J18_0259A15: き。願生の誠心を發し。念佛相續して往生を遂げぬ
J18_0259A16: るもの現に多く侍る。これのみわが不德の身にとり
J18_0259A17: ては過分の面目。ありがたき大功とぞおぼゆる。建
J18_0259B18: 立以下の事は。それ此功を成んがための方便なり。
J18_0259B19: しかるを世上の人。其枝葉たる方便のみを賞して。
J18_0259B20: わが本志とする。大功を輕くおもひたまふは。いと
J18_0259B21: 本意なきことに侍るなり。夫世尊も獨處閑居せよと
J18_0259B22: 敎へ。祖師も共住一處を制したまふ。われなにとし
J18_0259B23: て寺を造り。衆を集ることをもて本意とせん。され
J18_0259B24: とも今時の發心出家の人。跡を山林にくらます。堅
J18_0259B25: 固の道心本よりなく。ただ縁にまかせて居住し。隨
J18_0259B26: 意にふるまへば。多は半途に修行を退轉して。往生
J18_0259B27: の大事をしそんず。かかる怯弱の輩を。いかにもし
J18_0259B28: て一期隨分に。淨業相續させしめんとおもふ微少の
J18_0259B29: 願心より。淨財を喜捨するものあるに任せて精舍を
J18_0259B30: 營建し。衆僧を共住せしめ侍るなり。しかも佛祖の
J18_0259B31: 照覽。有識の鑒察を。常におそれ常に愧。いかにぞ
J18_0259B32: われこれを喜で。滿足のおもひあることあらんや。足
J18_0259B33: 下營構の願志。これ必ず無用にしたまふべし。其故
J18_0259B34: は。われ處處に精舍を營構するに。かつて財物を他

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