浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0259A01: | 中に。ある夜能圓和尚。師に申されけるは。尾州と |
J18_0259A02: | いひ京都といひ。その外所所に。よき道塲營構あり |
J18_0259A03: | て。衆多くあつり如法に勤修のこと。奧羽二州の邊ま |
J18_0259A04: | で。傳へ聞く人みな隨喜し奉るなり。師にも定て滿 |
J18_0259A05: | 足におぼしめし候ひつらん。其につき小子もなにと |
J18_0259A06: | ぞ本國において一宇を營構し。師の座下より四五輩 |
J18_0259A07: | 招て共住勤行し。師の影像を奉して遺跡に擬し。い |
J18_0259A08: | ささか慈恩にむくひ奉らばやと。申されければ。師答 |
J18_0259A09: | ていはく。おほよそわれを賞したまはる人も吾が處 |
J18_0259A10: | 處に精舍を建立せるを。佛門の光榮なりと讃歎せら |
J18_0259A11: | るるにすぎざるにや。わが意は全くしからず。夫一 |
J18_0259A12: | 人の往生は。實に一有情の成佛なり。よく一人を化 |
J18_0259A13: | し得る。其功まことに無盡不可思議なり。しかるに。 |
J18_0259A14: | 偏に佛祖の加被護念によりて。われに隨ひて法をき |
J18_0259A15: | き。願生の誠心を發し。念佛相續して往生を遂げぬ |
J18_0259A16: | るもの現に多く侍る。これのみわが不德の身にとり |
J18_0259A17: | ては過分の面目。ありがたき大功とぞおぼゆる。建 |
J18_0259B18: | 立以下の事は。それ此功を成んがための方便なり。 |
J18_0259B19: | しかるを世上の人。其枝葉たる方便のみを賞して。 |
J18_0259B20: | わが本志とする。大功を輕くおもひたまふは。いと |
J18_0259B21: | 本意なきことに侍るなり。夫世尊も獨處閑居せよと |
J18_0259B22: | 敎へ。祖師も共住一處を制したまふ。われなにとし |
J18_0259B23: | て寺を造り。衆を集ることをもて本意とせん。され |
J18_0259B24: | とも今時の發心出家の人。跡を山林にくらます。堅 |
J18_0259B25: | 固の道心本よりなく。ただ縁にまかせて居住し。隨 |
J18_0259B26: | 意にふるまへば。多は半途に修行を退轉して。往生 |
J18_0259B27: | の大事をしそんず。かかる怯弱の輩を。いかにもし |
J18_0259B28: | て一期隨分に。淨業相續させしめんとおもふ微少の |
J18_0259B29: | 願心より。淨財を喜捨するものあるに任せて精舍を |
J18_0259B30: | 營建し。衆僧を共住せしめ侍るなり。しかも佛祖の |
J18_0259B31: | 照覽。有識の鑒察を。常におそれ常に愧。いかにぞ |
J18_0259B32: | われこれを喜で。滿足のおもひあることあらんや。足 |
J18_0259B33: | 下營構の願志。これ必ず無用にしたまふべし。其故 |
J18_0259B34: | は。われ處處に精舍を營構するに。かつて財物を他 |