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J2710 関通和尚行業記 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0253A01: 然のことはり。たとへば豆を植て。麥を得ることあ
J18_0253A02: たはざるがごとし。さるを世人はかりなき。來生の
J18_0253A03: 苦患を。遁んことを願はずして。かなはざる今世の
J18_0253A04: 福樂を祈りもとめ。往生極樂の敎を聞てはものう
J18_0253A05: く。此世のつとめをなすには力をつくす。嗟呼愚な
J18_0253A06: るかな。たとひばたして所願意にかなひ。みな吉祥
J18_0253A07: を得とも。夢幻の一期また幾程の世ぞ。いはんや榮
J18_0253A08: 華は開くとも。たもちかたく。災患は拂へども。又
J18_0253A09: きたる。いかにそこれをおもはざる。予年頃法話の
J18_0253A10: ついで。よりよりかくのごとく勸諭しけるに。或は
J18_0253A11: 信ずるものあり。或は信ぜさるものもまた少から
J18_0253A12: ず。ここに去る延享のころ學友榮順といふ僧。たま
J18_0253A13: たま弊廬を訪ひ。道話この事におよび。問答義をな
J18_0253A14: せるうへ。榮順これを書に著して。時弊を救へとす
J18_0253A15: すめらる。此縁によりて。はじめて筆を起せり。一
J18_0253A16: 部の所詮。破執救弊を要とす。見ん人峻拒したまふ
J18_0253A17: ことなかれと。談ぜられける。
J18_0253B18: 寬延三年のころ。大和國。法隆寺北室院の法澤律師
J18_0253B19: を。尾張國。圓成寺に請じて。一夏の間。行事鈔を
J18_0253B20: 講ぜしむ。律師はこれ。性相の長者。禪密の達士に
J18_0253B21: して。淸修卓行のほまれ世に高く。緇素賢愚。等く
J18_0253B22: 尊崇す。洛西湛慧和上と道契ふかく。德門師等の進
J18_0253B23: 具の證明師なりけり。しかるに師に歸依して。圓光
J18_0253B24: 大師の一枚起請を。講せんことを請求せらる。師か
J18_0253B25: たく辭し申されしかども。逼請せられければ。やむ
J18_0253B26: ことを得ずして。遂に講筵を此寺に開かれき。講お
J18_0253B27: はりて。律師感歎したまひ。師の勸諭によりて。本
J18_0253B28: 願念佛の絶功をしりけるとて。これよりのちは。自
J18_0253B29: 行化化ともに口稱念佛をもて先務とし。法隆寺にか
J18_0253B30: へりて隨從の弟子等にも。專ら念佛を修せしめら
J18_0253B31: る。ここに人沙汰し申やう。口稱念佛は。餘のめで
J18_0253B32: たき修行觀法にたへざる人こそ勤べきに。律師のご
J18_0253B33: とき。戒律珠をかけ。諸宗の深義を。解しきはめた
J18_0253B34: まへる高僧には。いと不相應なる行法なり。そのう

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