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J2710 関通和尚行業記 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0232A01: ために衣食を减してわかち與へられき。更にまた依
J18_0232A02: 止せんことを請ふものあれば。また隨從せんといふものあ
J18_0232A03: り。彼人をも同しく淨土へ誘はんと欲するを。衆もゆ
J18_0232A04: るされよとて入衆せしめ。たがひに助あひ麤を食ひ
J18_0232A05: 用を縮めて。その人にあたへてぞ勤めさせられける。
J18_0232A06: 資糧しばしば乏しき時も。志操かつて變ぜず。一針
J18_0232A07: 一草も檀信を募ることなく。日日隨從の衆とともに村
J18_0232A08: 里に分衞して。淸淨に自活せらる。食もし餘長ある
J18_0232A09: 時は。其村の小兒または貧窮のものを招きあつめこ
J18_0232A10: れを食せしめ。食後にはかならず線香一炷づづ念佛
J18_0232A11: を唱へさせ。をはりには因果のおそるべき謂。念佛
J18_0232A12: のありがたきこと。世の無常なることはりなど。實を
J18_0232A13: 盡しいと慇懃に説聞せらるること常なりしかば。中
J18_0232A14: 一色村の者は。菽麥不辨の童男童女の類までも悉く
J18_0232A15: 因果を信じて深く惡事を恐れ。蟬蟀を翫び蝱蠅を殺
J18_0232A16: すなどのことはすべてなさざりし。もしたまたまこれ
J18_0232A17: をなすものあれば。西方寺に往て師に告んといへば
J18_0232B18: 皆おそれ愼みける。かくたがひに誡あひければ殺生
J18_0232B19: の業おのづから止みて。戯れにも草木泥土をあつめ
J18_0232B20: て佛像堂宇を造り。繩を結て集會念佛の眞似をなし
J18_0232B21: ぬ。また此村の近邊に江河あまたありければ好て殺
J18_0232B22: 生する人も多かりけるに。師その人を見る毎に寺に
J18_0232B23: 招きて。殺生の罪の重こと報のおそろしき現證など説
J18_0232B24: 聞せ。かまへて殺生をやめ念佛せよといとこまやか
J18_0232B25: に勸誡し。或は其人に價を與へて取得たる魚鳥を放
J18_0232B26: たせ。またそれを世わたる業となす者には。財を與へ
J18_0232B27: て其業を變さしめなどせられけるゆゑ。いかなる強
J18_0232B28: 惡邪見の輩も後には慚愧の心を生じ。殺具をことこと
J18_0232B29: く燒捨てかたく殺生をやめまた後には肉食をも止る
J18_0232B30: にいたるものもあり。これによりて其頃は魚鳥を商
J18_0232B31: ふもの。村の中を往來することさへなきに至り。唯
J18_0232B32: 少長ともに惡事をなすを耻辱とし。一邑擧りて往生
J18_0232B33: を願ひ念佛を勵み勤ることにぞなりにける。師かく
J18_0232B34: のごとく行相勵しかりけるゆゑ。隨從の僧も隨ひて勇

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