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J2710 関通和尚行業記 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0230A01: 又稱名のいとまに。臨終の用意念佛の安心など。委
J18_0230A02: 曲なるものがたりありける。淸話のついで本國のこと
J18_0230A03: におよびければ。上人告げていはく。西方寺は予
J18_0230A04: か舊縁の地にして。和尚また得度の道塲なり。若法
J18_0230A05: 燈消なんとすることあらば。和尚速に彼寺に移りて住
J18_0230A06: 持し。淨法をして永く斷ることなく。利益無窮ならし
J18_0230A07: められよ。予が最後の遺告なり違戾することなかれ
J18_0230A08: と。師其命の重きに應じて。かたく嚴命を護り。よ
J18_0230A09: ろしくこれを勤むべし。御心を安してただ聖衆の迎
J18_0230A10: 接を待たまふべしと。上人これを聞ていよいよ喜び
J18_0230A11: 念佛を勵み勤らる。病腦日を追て重りければ。師孝順
J18_0230A12: のいたすところ。九日九夜少しも睡臥せず。左右を
J18_0230A13: 離るることなく。意を先とし顏を承け瞻侍せられけ
J18_0230A14: る。上人怡然として師に告ていはく。予近年念佛を
J18_0230A15: 加增して。日日十萬を課し。願行成就しぬ。此度定
J18_0230A16: て往生の素懷を遂るならん。これ偏に和尚の勸策に
J18_0230A17: よる。和尚の篤情言の謝するところにあらず。命終
J18_0230B18: の期正にいたれり。和尚心を得よとて。師の左の膝
J18_0230B19: によりたまへば。師又左の手をもて上人の頂にそ
J18_0230B20: へ。右の手にて引磬を鳴し。稱名の助音せられけれ
J18_0230B21: ば。上人聲聲分明に念佛相續し。最後二十餘遍やう
J18_0230B22: やく微音にして化したまふ。實に享保十二年。未三
J18_0230B23: 月五日辰の刻なり。世壽六十六。法臘五十二なりし
J18_0230B24: 此月七日法に凖して喪事を營み。みづから全身の骨
J18_0230B25: を護持し。本國西方寺にいたり。塔を建て中陰の追
J18_0230B26: 薦力を盡して慈蔭に報はれける。第五七日の宿忌に
J18_0230B27: 當りて。佛前において一心に念佛し居られけるに。
J18_0230B28: 夢現の別なく。恍惚として。御身五尺ばかりの阿彌
J18_0230B29: 陀佛。光を放て現前し。たちまち堂の外へ出さらん
J18_0230B30: としたまひしかば。師こはいづかたへ行たまふやと
J18_0230B31: 抱き止め奉られければ。如來にはあらず上人なり。威
J18_0230B32: 容嚴然として。我既に上品上生に往生せりと告をは
J18_0230B33: り。かきけち失玉ひぬ。師は悲喜の涙に咽び。いよ
J18_0230B34: いよ精勤を盡されける。委は隨聞往生記のごとし。

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