浄土宗全書を検索する
AND検索:複数の検索語をスペースで区切って入力すると、前後2行中にそれらを全て含む箇所を検索します。
巻_頁段行 | 本文 |
---|---|
J18_0230A01: | 又稱名のいとまに。臨終の用意念佛の安心など。委 |
J18_0230A02: | 曲なるものがたりありける。淸話のついで本國のこと |
J18_0230A03: | におよびければ。上人告げていはく。西方寺は予 |
J18_0230A04: | か舊縁の地にして。和尚また得度の道塲なり。若法 |
J18_0230A05: | 燈消なんとすることあらば。和尚速に彼寺に移りて住 |
J18_0230A06: | 持し。淨法をして永く斷ることなく。利益無窮ならし |
J18_0230A07: | められよ。予が最後の遺告なり違戾することなかれ |
J18_0230A08: | と。師其命の重きに應じて。かたく嚴命を護り。よ |
J18_0230A09: | ろしくこれを勤むべし。御心を安してただ聖衆の迎 |
J18_0230A10: | 接を待たまふべしと。上人これを聞ていよいよ喜び |
J18_0230A11: | 念佛を勵み勤らる。病腦日を追て重りければ。師孝順 |
J18_0230A12: | のいたすところ。九日九夜少しも睡臥せず。左右を |
J18_0230A13: | 離るることなく。意を先とし顏を承け瞻侍せられけ |
J18_0230A14: | る。上人怡然として師に告ていはく。予近年念佛を |
J18_0230A15: | 加增して。日日十萬を課し。願行成就しぬ。此度定 |
J18_0230A16: | て往生の素懷を遂るならん。これ偏に和尚の勸策に |
J18_0230A17: | よる。和尚の篤情言の謝するところにあらず。命終 |
J18_0230B18: | の期正にいたれり。和尚心を得よとて。師の左の膝 |
J18_0230B19: | によりたまへば。師又左の手をもて上人の頂にそ |
J18_0230B20: | へ。右の手にて引磬を鳴し。稱名の助音せられけれ |
J18_0230B21: | ば。上人聲聲分明に念佛相續し。最後二十餘遍やう |
J18_0230B22: | やく微音にして化したまふ。實に享保十二年。未三 |
J18_0230B23: | 月五日辰の刻なり。世壽六十六。法臘五十二なりし |
J18_0230B24: | 此月七日法に凖して喪事を營み。みづから全身の骨 |
J18_0230B25: | を護持し。本國西方寺にいたり。塔を建て中陰の追 |
J18_0230B26: | 薦力を盡して慈蔭に報はれける。第五七日の宿忌に |
J18_0230B27: | 當りて。佛前において一心に念佛し居られけるに。 |
J18_0230B28: | 夢現の別なく。恍惚として。御身五尺ばかりの阿彌 |
J18_0230B29: | 陀佛。光を放て現前し。たちまち堂の外へ出さらん |
J18_0230B30: | としたまひしかば。師こはいづかたへ行たまふやと |
J18_0230B31: | 抱き止め奉られければ。如來にはあらず上人なり。威 |
J18_0230B32: | 容嚴然として。我既に上品上生に往生せりと告をは |
J18_0230B33: | り。かきけち失玉ひぬ。師は悲喜の涙に咽び。いよ |
J18_0230B34: | いよ精勤を盡されける。委は隨聞往生記のごとし。 |