ウィンドウを閉じる

J2710 関通和尚行業記 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0229A01: 鑑知したまひ。その心を打破せんがために。かくき
J18_0229A02: びしく誡示したまふと覺ゆ。ここに師は大和尚の誡
J18_0229A03: 示を深く信受し服膺して。げに自身の得脱こそ大切
J18_0229A04: なれと驚きて。一心勇猛に稱名せられける間。自行
J18_0229A05: の根株なほ一重かたくなり侍るによりて。化他の枝
J18_0229A06: 葉はおのづから漸漸に榮えなんと自知せられたるな
J18_0229A07: るべし。しかれば師のためには。此大和尚の敎誡。
J18_0229A08: ただ一時除病の藥語となるのみにあらず。しかも大
J18_0229A09: なる善縁ならん。又常に名利毀譽にそめらるる人の
J18_0229A10: ためには。此誡示こそ千歳不改の寶訓ならめ。抱道
J18_0229A11: の高士これを思忖したまへ。
J18_0229A12: 師。天資溫恭謙遜にして。人に下るの風韻ありし。
J18_0229A13: 玆に照譽上人は老衰寺務にたへず。享保十年の春西
J18_0229A14: 方寺を。潮雅和尚といへるに讓りて閑居し。もはら
J18_0229A15: 淨業を策修し玉ひしが。師の獨住勵行を加へらるる
J18_0229A16: よしを聞て。隨喜のあまり同十二年未の春。尾陽を
J18_0229A17: 發して勢州にいたり。師の艸廬を訪ひ玉ふに。師の
J18_0229B18: 道容昔時にことなるを見て。ねもころに稽首したま
J18_0229B19: ひければ。師もまた驚き起て。上人を禮敬し。師資
J18_0229B20: 涙に咽び喜ひかぎりなかりき。師淨業精修の中に。
J18_0229B21: 上人をとどめて奉事せらるること深切なりしかば。
J18_0229B22: しばらく此に寓居したまひ。修道いよいよ進み師資
J18_0229B23: 相ともに練行せられける。上人は師の修行に身心を
J18_0229B24: 凝さるるやうを見て。歎じていはく。われ御房に依
J18_0229B25: 止せずんば。なにによりてか精修すること此にい
J18_0229B26: たらんや。御房はこれ予が善知識なりとて。これよ
J18_0229B27: り師を和尚と呼たまひしとなん。かくて上人彼艸庵
J18_0229B28: に日を經て留まらるる中に。微恙を示して服食日に
J18_0229B29: 减じ。氣力衰へければ。師遠近に馳走して醫藥をも
J18_0229B30: とめ。好食をととのへ。看病心を盡されしかども。
J18_0229B31: 其驗なければ上人みづから快復なりがたきをしり。
J18_0229B32: 死を念して念佛したまひ。師もこころを得て勸勵
J18_0229B33: し。六時のいたる毎に。線香一炷づづ。上人は褥上
J18_0229B34: に臥し。師は枕上に坐し。聲を同して稱名せらる。

ウィンドウを閉じる