浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0229A01: | 鑑知したまひ。その心を打破せんがために。かくき |
J18_0229A02: | びしく誡示したまふと覺ゆ。ここに師は大和尚の誡 |
J18_0229A03: | 示を深く信受し服膺して。げに自身の得脱こそ大切 |
J18_0229A04: | なれと驚きて。一心勇猛に稱名せられける間。自行 |
J18_0229A05: | の根株なほ一重かたくなり侍るによりて。化他の枝 |
J18_0229A06: | 葉はおのづから漸漸に榮えなんと自知せられたるな |
J18_0229A07: | るべし。しかれば師のためには。此大和尚の敎誡。 |
J18_0229A08: | ただ一時除病の藥語となるのみにあらず。しかも大 |
J18_0229A09: | なる善縁ならん。又常に名利毀譽にそめらるる人の |
J18_0229A10: | ためには。此誡示こそ千歳不改の寶訓ならめ。抱道 |
J18_0229A11: | の高士これを思忖したまへ。 |
J18_0229A12: | 師。天資溫恭謙遜にして。人に下るの風韻ありし。 |
J18_0229A13: | 玆に照譽上人は老衰寺務にたへず。享保十年の春西 |
J18_0229A14: | 方寺を。潮雅和尚といへるに讓りて閑居し。もはら |
J18_0229A15: | 淨業を策修し玉ひしが。師の獨住勵行を加へらるる |
J18_0229A16: | よしを聞て。隨喜のあまり同十二年未の春。尾陽を |
J18_0229A17: | 發して勢州にいたり。師の艸廬を訪ひ玉ふに。師の |
J18_0229B18: | 道容昔時にことなるを見て。ねもころに稽首したま |
J18_0229B19: | ひければ。師もまた驚き起て。上人を禮敬し。師資 |
J18_0229B20: | 涙に咽び喜ひかぎりなかりき。師淨業精修の中に。 |
J18_0229B21: | 上人をとどめて奉事せらるること深切なりしかば。 |
J18_0229B22: | しばらく此に寓居したまひ。修道いよいよ進み師資 |
J18_0229B23: | 相ともに練行せられける。上人は師の修行に身心を |
J18_0229B24: | 凝さるるやうを見て。歎じていはく。われ御房に依 |
J18_0229B25: | 止せずんば。なにによりてか精修すること此にい |
J18_0229B26: | たらんや。御房はこれ予が善知識なりとて。これよ |
J18_0229B27: | り師を和尚と呼たまひしとなん。かくて上人彼艸庵 |
J18_0229B28: | に日を經て留まらるる中に。微恙を示して服食日に |
J18_0229B29: | 减じ。氣力衰へければ。師遠近に馳走して醫藥をも |
J18_0229B30: | とめ。好食をととのへ。看病心を盡されしかども。 |
J18_0229B31: | 其驗なければ上人みづから快復なりがたきをしり。 |
J18_0229B32: | 死を念して念佛したまひ。師もこころを得て勸勵 |
J18_0229B33: | し。六時のいたる毎に。線香一炷づづ。上人は褥上 |
J18_0229B34: | に臥し。師は枕上に坐し。聲を同して稱名せらる。 |