浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0221A01: | 甚だ宜からず。夫此身體をうけ此道門に入ことを得ら |
J18_0221A02: | れしは。全く師僧父母の恩蔭なれば。かたく孝順の |
J18_0221A03: | 誠心を發すべし。これ實に修行の初門成佛の基本な |
J18_0221A04: | り。佛成道最初の制誡おもひ合さるべし。孝順實い |
J18_0221A05: | たる時は世出世の行願ことごとく成滿せずといふことな |
J18_0221A06: | し。若不孝疎略なれば衆願障りありて萬行成じ難 |
J18_0221A07: | し。恐愼むべきことなり。御房大業を成ぜんとおもひ |
J18_0221A08: | 給はば孝順を先にすべし。これよりはやく先行脚を |
J18_0221A09: | やめて本國にかへり。師僧父母の心を安め奉り。さ |
J18_0221A10: | てよろしく一處に住し志を堅くして淨業を勵み勤べ |
J18_0221A11: | しと親切に示訓せらる。師すなはちその懇志を謝し |
J18_0221A12: | 拜を作して去らる。或人はいふ老禪は古月和尚にて |
J18_0221A13: | ありしと。果して然や否はしらず。師それより老禪 |
J18_0221A14: | の示訓を熟思し。本國に還る心ありといへども。夙 |
J18_0221A15: | 志に背ことなれば速に决しがたく日を經られしに。又 |
J18_0221A16: | 或寺に宿を投じ無能和尚行業記を閲し。遊歷して日 |
J18_0221A17: | を過は閑居して念佛するにはしかずと自知し。忽志 |
J18_0221B18: | を决し遠遊をやめて故郷に歸られけり。 |
J18_0221B19: | 享保十年。師人の請するに應じて。しばらく伊勢國 |
J18_0221B20: | 長島の光岳寺といへるに住持せられき。これ郷里を |
J18_0221B21: | さること遠からず。又寺境閑靜にして道を修するに |
J18_0221B22: | 便あればなり。此寺に住して晝夜念佛せらるるさま |
J18_0221B23: | いと精進なりしかば諸人感歎して歸依淺からず。中 |
J18_0221B24: | にも寺の檀越なる平岩氏空山といへる人。師の專修 |
J18_0221B25: | 一行の勸を信して念佛懈りなく勤ける。玆に小松崎 |
J18_0221B26: | 八右衞門。二階堂文右衞門などいふ儒士ありて。空 |
J18_0221B27: | 山に面會する毎に佛道を誹謗して念佛の行を廢せし |
J18_0221B28: | めんとす。かくて空山七十餘歳にして重き腫病に罹 |
J18_0221B29: | り。治術を盡せども更に驗しあることなければ。必死 |
J18_0221B30: | の覺悟をなしてひたすらに稱名し往生を願ける。時 |
J18_0221B31: | に小松崎八右衞門訪て空山に申やう。我等常常佛法 |
J18_0221B32: | の實なきむねを説ども公これを信ぜず。佛敎もし證 |
J18_0221B33: | あらは何そ此惡病に罹らんや。公が平生の念佛何の |
J18_0221B34: | 利益かある。請ふ速に妄解をやめて我聖儒の道に歸 |