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J2710 関通和尚行業記 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0220A01: 望。月の光のさやかなるにつきては攝取不捨の光益
J18_0220A02: を想ひ風の聲の吹送に和しては大利無上の尊號を唱
J18_0220A03: へられけん。澄わたりたる心のうちおしはかるべ
J18_0220A04: し。
J18_0220A05: 師かくてみなひ村を出て南都にいたり春日の神祠に
J18_0220A06: 詣。又安倍の文珠に參籠すること七箇日。水穀を斷て
J18_0220A07: 至心に念佛し。大聖の冥助を仰きて夙志を祈請せら
J18_0220A08: れける。又紀伊國を巡歷の時。ある日人烟絶し曠野
J18_0220A09: を通行せられけるが。日もやや暮におよびしかは樹
J18_0220A10: 下に宿せんとおもひて。ここかしこ見回られける向
J18_0220A11: より老婆一人きたりて師にいふやう。修行の御僧と
J18_0220A12: 見うけ奉る。今夜は幸に志しのことあれば我家に請じ
J18_0220A13: 留たてまつらんといひて先に立て行。師隨て程なく
J18_0220A14: 一の茅屋に入られしに。合家ことことく出て色代しも
J18_0220A15: てなし。さて一室に入て臥しむ。夜半のころ何かは
J18_0220A16: 物にふるるここちしければ。驚覺て傍を見らるるに
J18_0220A17: 端嚴の女人したしく師の臥具の中に臥し居けり。師
J18_0220B18: こは如何なることぞと忽ち起て其家を遁れ出て。跡を
J18_0220B19: かへり見られけれは。ただ寂莫たる野原にて家もな
J18_0220B20: く人もなし。師いと怪しきことにおもひ。其邊の艸
J18_0220B21: のうへに坐し高聲に念佛して一夜を明されける。師
J18_0220B22: 行脚の間これに類する難に逢れしこと度度なり。今其
J18_0220B23: 中の一を擧るのみ。
J18_0220B24: 師それより九州に渡り日向國を經歷し。一夜或山中
J18_0220B25: の禪院に寄宿せらる。其住持の老禪いと道たけ德ふ
J18_0220B26: かくみえければ。師謹て敎示を請求らる。老禪すな
J18_0220B27: はち問ていはく。御房は何れの行を修して一大事を
J18_0220B28: 了ぜんとおもふやと。師答ていはく。われ淨土を宗
J18_0220B29: とす念佛して極樂に生ぜんと欲すと。老禪又いは
J18_0220B30: く。御房何事に依てか諸國を行脚せらるるや。師所思
J18_0220B31: を述らる。老禪示していはく。御房の師僧父母いま
J18_0220B32: だ世にいますべし。求法練行のために勞苦を厭ずし
J18_0220B33: て東西に雲水すること。其好心もとも稱歎するに堪た
J18_0220B34: りといへとも。師僧父母世に在ばかく遠遊すること

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