浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J18_0219A01: | 四十八日の別時念佛日をさだめける時にてありしか |
J18_0219A02: | ば。しひて師の説法を請申ける。師も舊友のもとめ |
J18_0219A03: | いなみがたくして四十八日の間父子相迎を講せら |
J18_0219A04: | る。道俗未曾有のおもひをなし深く信敬して念佛に |
J18_0219A05: | 歸するものおほかりけり。説法既に終りけれは寺主 |
J18_0219A06: | および歸依の男女。法衣世財など供養して化益の恩 |
J18_0219A07: | を謝す。師それを固辭してうけられず。唯古笈一あ |
J18_0219A08: | りけるを見てこれを乞もとめらる。寺主いと怪しき |
J18_0219A09: | ことにおもひてそのよしを問はれければ。師答てい |
J18_0219A10: | はく。われ幼年より少く願を發せしことあり。師範 |
J18_0219A11: | 照譽もまた懇切にしかしかのことを敎訓せられけれ |
J18_0219A12: | ば。いかにもして如實に自行を修熟し。しかありて |
J18_0219A13: | のち。隨分に力をつくし他を化導せんとこころかけ |
J18_0219A14: | 侍れと。兎角おもひわづらふのみにて。立脚いまだ |
J18_0219A15: | さだまらず行業の進こともなければ。此心を引立ん |
J18_0219A16: | ために時時僧傳を讀て古德の行狀をうかがふに。或 |
J18_0219A17: | は明師を千里の外に求め。或は道心を諸國の佛神に |
J18_0219B18: | 祈りたまふことあれば。予もおよばずながらその賢 |
J18_0219B19: | き跡を學んとおもひ先此國へ出侍る。かく踐履いま |
J18_0219B20: | だかたからざる身をもて人人の歸依を受んこと。自 |
J18_0219B21: | 己の素志に背くのみにあらず師範の敎示にも違ひ |
J18_0219B22: | て。かたかた本意ならず覺はべるなど語られけれ |
J18_0219B23: | ば。寺主深く其志を感じ。涙にくれて杖と笈とをま |
J18_0219B24: | ゐらせける。師明旦その笈を負ひ飄然として出られ |
J18_0219B25: | ける。歸依の男女これを見るもの袂をうるほさぬは |
J18_0219B26: | なかりしとなん。それより孤影杖錫と伴ひ。物外に |
J18_0219B27: | 徜徉して諸州を行脚せらる。およそ行脚の間は。衣 |
J18_0219B28: | はただ身をかくすのみにして三衣瓶鉢の外長物な |
J18_0219B29: | く。食はわづかに命を支ふるほどにて分衞餘りあれ |
J18_0219B30: | ば鳥獸に施與せらる。或は樹下に坐し。或は石上に |
J18_0219B31: | 息ひ。夜も人處に投して宿することは稀にて。華洛の |
J18_0219B32: | 邊を遊履せらるるには加茂の河原などにも臥申さ |
J18_0219B33: | れしとかや。さてぞ人烟遙に隔ちたる。野のすゑ山 |
J18_0219B34: | の奧なとにては彼笈によりかかり靜に更ゆく空を |