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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0132A01: に滿つ。世禮法話しかしかの事おはりて。良聲上人
J18_0132A02: 申されしは。君生來道心堅固にして。念佛功積り。
J18_0132A03: 運心年久しけれは。此度上品往生疑ひあるべからず
J18_0132A04: と。外にてもいと羡しく存する也と。師申さるるや
J18_0132A05: う。不思議の因縁を以て。數萬の人を敎化し。此度
J18_0132A06: 淨土に罷り歸り候事。本懷これに過き候はずと。師
J18_0132A07: の沒後に。良聲上人深くこの語を感じ。權化のおの
J18_0132A08: づから密因を洩されけるにやと。貴ひ申されける
J18_0132A09: 一同日の夜。師申されけるは。われこの度の病必死
J18_0132A10: と思ひ定むといへとも。凡情の習ひ疑念殘らざるに
J18_0132A11: あらず。又看侍の者も。其程一定し難し。こよひ聖
J18_0132A12: 〓を以て。佛意を伺ひ奉らんと。門人蓮心に命じ
J18_0132A13: て。快氣必死の二鬮を作らしむ。是を佛前に置き。
J18_0132A14: 暫く念佛して御鬮を申降し。師の枕許に持參しける
J18_0132A15: に。師すなはち合掌心念し。しばしありて。二鬮の
J18_0132A16: 中一箇を取りて披き見られければ。必死の御鬮なり
J18_0132A17: けり。師悅ひの氣色甚しく。迚の御慈悲に。今一度
J18_0132B18: 申降して。いよいよ往生を決定すべしと。暫く心念
J18_0132B19: して取られけるに。又必死の御鬮なり。師ますます
J18_0132B20: 感悅せられ侍りき
J18_0132B21: 一同廿八日の朝。師又蓮心を召て仰せけるは。此度
J18_0132B22: 往生を遂るに付て。猶又死期の延促をも。御鬮にて
J18_0132B23: 伺ひ度おもふなり。年内か明る正月の中。上旬中旬
J18_0132B24: 下旬か。この四箇の御鬮を造りて。昨夜の如くし
J18_0132B25: て。佛前に捧ぐべしとありければ。畏りて領承し。
J18_0132B26: すなはち御鬮を申降して師に奉りける。兩度とられ
J18_0132B27: けるに。兩度ながら年内といふ御鬮なりけり。仍て
J18_0132B28: 俄かに臨終の道塲を構へ。兼て命ぜられし如く。終
J18_0132B29: 焉の方軌一一にこれを調へ。頭北面西にして五色の
J18_0132B30: 糸を佛の御手に懸け。心口相應し。聲聲絶る事なく
J18_0132B31: 念佛せられけり。然るに師の往生正月二日なりける
J18_0132B32: に。兩度まで年内の御鬮おりし事は。死期を近く思
J18_0132B33: ひ取りて。油斷なく稱名相續せしめんとの冥慮の方
J18_0132B34: 便なるべしとぞ。申しあひける。師ことさら病苦も

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