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J2660 無能和尚行業記 宝洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J18_0133A01: なかりけれは。心の儘に晝夜間斷なく稱名相續せら
J18_0133A02: る看病の者代る代る助念するに。助音は疲るといへ
J18_0133A03: ども。師の稱名は猶も勇猛なりける。稱名の度ごと
J18_0133A04: に助給への詞を唱へらるる事切なり。時時高聲に極
J18_0133A05: 重惡人。無他方便。唯稱彌陀。得生極樂の文を誦
J18_0133A06: じ。或は佛の大慈悲を以て。此度兎にも角にも助給
J18_0133A07: へと申されし事頻なり。同日午の刻過る頃。師厭求
J18_0133A08: 蓮心の二人を召て告て云。われ今しばらく眠りたる
J18_0133A09: 内に西方淨土に到りぬ。淨土の莊嚴を拜見し。一期
J18_0133A10: の大願を成滿し侍る悅ひ。喩を取るに物なし。その
J18_0133A11: 所見の相は。具に述べからず。一一經説の如く。少
J18_0133A12: も違ふことなし。なむぢら毛頭も疑ひを殘すことなかれ
J18_0133A13: と。心中に深く感ぜらるる樣なり。二人の者思ふや
J18_0133A14: う。師今に於ては。萬事懶くおぼしめすらめども。
J18_0133A15: 此度尋ね奉らすむは。後殘念なるべしと。すなはち
J18_0133A16: 師に問ひ奉る。淨土の莊嚴は。いかやうに候やと。
J18_0133A17: 師いはく。宮殿樓閣は。皆金銀を以て成じ。七寶莊
J18_0133B18: 嚴のまき柱。言語の及ぶ所にあらず。地は悉く金色
J18_0133B19: にて輭かなり。履む時は窪み入ること四寸なり。わ
J18_0133B20: れいまだ此身を捨ずして。早く淨土の莊嚴を見奉る
J18_0133B21: こと。生前の大慶何事か。これにしかんと。頻に歡喜
J18_0133B22: の涙を落され侍る。同日の夜。門人に命じて。靜か
J18_0133B23: に十樂の和讃を唱へしめ。悉く聞き畢りて感嗟せら
J18_0133B24: れき。師所勞增氣してより以來。耳目すこしく矇眛
J18_0133B25: にして。聲をきく物を見らるる事も。明了ならず。
J18_0133B26: 廿八日臨終の道塲に入れし後は。二根明利なること平
J18_0133B27: 日にたがはず。みな不思議の想を。なして悅びあへ
J18_0133B28:
J18_0133B29: 一同廿九日。日ごろ法化を蒙りし。篤信の道俗。師
J18_0133B30: の終焉近づき給ふよし傳聞きて。をのをの末期の慈
J18_0133B31: 容を拜して最初の引接に預らんと。遠近踵を繼て玆
J18_0133B32: に來集せり。師衆に對して永訣を述べ。此度生涯の大
J18_0133B33: 望を成就して。先達て往生を遂るなりをのをのに
J18_0133B34: も隨分念佛退轉なくして。跡より往生を遂らるべ

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