浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J17_0669A01: | 衰へ萬事ほゐなく思しめし世をいとひ玉ふにやかね |
J17_0669A02: | て上人の德香を聞及ひ給ひけれは天文廿三年の春微 |
J17_0669A03: | 行ましまして上人の室に來臨ありひそかに仰けるは |
J17_0669A04: | 我祖尊氏公の餘光もかすかに將軍の嚴威も衰へぬれ |
J17_0669A05: | はあれどもなきがごとく斯る世にながらへ侍るもほ |
J17_0669A06: | ゐなく後世のほども覺束なく思ひ侍れは要法を示し |
J17_0669A07: | 給はれと仰られける時に上人宣はく今日世尊大集經 |
J17_0669A08: | に妻子珍寶及王位臨命終時不隨者唯戒及施不放逸今 |
J17_0669A09: | 世後世爲伴侶と説おかせ給へは王位高貴のかたかた |
J17_0669A10: | も報命にはかきりありて終には殺鬼に伴はれ給ふ事 |
J17_0669A11: | 免かれがたし爾の時にいたりてみづから獨り冥途に |
J17_0669A12: | 趣かせ給ふに供奉の伴侶もなくただ布施持戒などの |
J17_0669A13: | 善根のみぞ供奉ともなり申べし然にさせる善根もな |
J17_0669A14: | くとりたてて申ほどの修行もなし給はされははたし |
J17_0669A15: | て獄卒に捕はれ閻王の判斷をうけ給ふへし其ときに |
J17_0669A16: | いたりて後悔なし玉ふともその甲斐あるまし妻子眷 |
J17_0669A17: | 屬多く侍りても皆恩愛の名殘を惜みわかれのみを悲 |
J17_0669B18: | しみ或は財寶にかかはりて眞實の手向もなくいたづ |
J17_0669B19: | らに過ぬれば地獄の苦報まぬかれがたししかるに彌 |
J17_0669B20: | 陀ほとけこれを憐れみ因位法藏比丘にておはせし時 |
J17_0669B21: | 世自在王如來の御所にて大願を發し五劫に思惟し若 |
J17_0669B22: | 我佛となりたらんに十方衆生いつはらずかさらずま |
J17_0669B23: | ことの心にて我國に生れんと思ひ我名を稱する事上は |
J17_0669B24: | 一生下は臨終に一聲十聲せんに生せずんば成佛すべ |
J17_0669B25: | からずとふかく誓を立給ひしに此願成就ましまして |
J17_0669B26: | 今現に西方に報土をかまへ成佛して阿彌陀佛と號し |
J17_0669B27: | 奉りぬゆへに今日釋尊の敎にしたかひ十方諸佛の誠 |
J17_0669B28: | 證を信して淨土に生ぜん事を願ひ念佛するの外に此 |
J17_0669B29: | 苦をまぬかるへき法なし此故に大集月藏經に我末法 |
J17_0669B30: | 時中億億衆生起行修道未有一人得者と説玉へり然に |
J17_0669B31: | 正像末の三時を以てこれをはかるに當今は現に末法 |
J17_0669B32: | 五濁惡世にして父母に孝なく君に忠なく邪惡のみな |
J17_0669B33: | す事多は是衆生濁なり種種の邪見を生し正直ならす |
J17_0669B34: | われのみよしとして善道を修せさるを見濁といひ今 |