浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J16_0443A01: | はしめ。十一月十八日に結願の夜半に。道塲にして |
J16_0443A02: | 高聲念佛し。みづから腹を切て。五臟六腑を取出 |
J16_0443A03: | し。練大口につつみて。忍てうしろの河にすてさせ |
J16_0443A04: | にけり。夜陰の事なれは。人更にこれをしらず。其 |
J16_0443A05: | 後僧衆にむかひて。加樣に出家籠居して。大臣殿の |
J16_0443A06: | 御菩提をとふらひ申につけても。主君の御なごり |
J16_0443A07: | も。戀しくましますうへ。上人も極樂に必參りあへ |
J16_0443A08: | と仰の侍りしに。今まで往生せずして。穢土のすま |
J16_0443A09: | ゐ。かたかた無益なり。釋尊も八十の御入滅。上人 |
J16_0443A10: | も八十の御往生。尊願又滿八十なり。第十八は念佛 |
J16_0443A11: | 往生の願なり。今日又十八日なり。如法念佛の結願 |
J16_0443A12: | に當て。今日往生したらんは。殊勝の事なるへしな |
J16_0443A13: | ど申けれは。かかる用意とは思もよらす。唯あらま |
J16_0443A14: | しの詞と心得て。實にめてたくこそ候はめと返答し |
J16_0443A15: | けるに。その夜もあけ。十九日にもなりぬ。あへて |
J16_0443A16: | 苦痛なし。唯今臨終すへき心地もなかりけれは。子 |
J16_0443A17: | 息の民部大夫守朝をよひて。切たる腹を引あけて。 |
J16_0443B18: | まろきもといふ物の殘て。臨終ののぶると覺ゆるな |
J16_0443B19: | り。よりて見よと申ける時ぞ。はじめて人しりにけ |
J16_0443B20: | る。心さきの程に。まろき物のあるよしを申けれ |
J16_0443B21: | は。手を入て引切てなげすてて。これがのこれる故 |
J16_0443B22: | に。臨終はのぶるなるへしとそ申ける。人人驚きあ |
J16_0443B23: | はてければ。娑婆のいとはしく。極樂のねがはしき |
J16_0443B24: | 志。日に隨ていやまさりなれは。今一日もとくまい |
J16_0443B25: | りたくて。かくはからひぬるよしを。かきくどき申 |
J16_0443B26: | けれは。實に願往生の志の熾盛なるありさま。みる |
J16_0443B27: | 人みな涙をながさぬはなし。すこしきのいたみもな |
J16_0443B28: | くて念佛しけるが。七日までのひければ。うがひの |
J16_0443B29: | 水のかよふゆへなるへしとて。うがひをとどめて。 |
J16_0443B30: | 塗香を用けるが。氣力も更におとろへす。程なく疵 |
J16_0443B31: | も愈にける。後には時時行水を用けるとかや。正月 |
J16_0443B32: | 一日にもなりにけれは。死せすしては。往生すべき |
J16_0443B33: | みちなきゆへに。尊願は正月一日の祝には。臨終の |
J16_0443B34: | 儀式をならして。年ひさしくなれり。日來のあらま |