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J1370 一枚起請講説 法洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0307A01: さて大師御流刑の義に就ては。月輪禪定殿下の御嘆
J09_0307A02: きかぎりなく。いかなる宿業にて。斯ることを見聞す
J09_0307A03: らんとて。悲み玉ふ御ありさま。見奉る人人も。心
J09_0307A04: のおき所なき程なり。此ことを申とどめざること。生て
J09_0307A05: 世にある甲斐なけれども。御勘氣の初めなれば。左右
J09_0307A06: なく申さんも。其恐れあり。連連に御氣色を窺ひ。
J09_0307A07: 敕免を申し行はんと。せめても是をなぐさめとし玉
J09_0307A08: へり。土佐の國迄は。餘りに遙なる程なり。我知行
J09_0307A09: の國なればとて。讃岐國へぞ移し玉ひける。御名殘
J09_0307A10: やる方なく思し召れけるにや。殿下御消息を送り玉
J09_0307A11: ひける奧に。『ふりすてて行は別のはしなれと。ふみ
J09_0307A12: わたすべき事をしそ思ふ』と侍りければ。大師より
J09_0307A13: は。『露の身はここかしこにてきえぬとも。心は同じ
J09_0307A14: 華の臺ぞ』と御返しありしとなり。人人此御贈答の
J09_0307A15: 深情を思ひやり奉り。我身をただす鏡とすべし。さ
J09_0307A16: すれば。師弟及び同行の間に。不和合違害の失を離
J09_0307A17: れ未來は必ず同じ蓮の臺に昇り。無爲の快樂を受る
J09_0307B18: ことなれば。深く思ひ習ふべきなり。
J09_0307B19: 建永二年三月十六日に。大師都を出て配所に赴き玉
J09_0307B20: ふに。信濃の國の御家人。角張の成阿彌陀佛最後の
J09_0307B21: 御供なりとて。御輿をかく。同じさまに隨ひ奉る僧
J09_0307B22: 六十餘人なり。御名殘を惜み。前後左右に走り隨ふ
J09_0307B23: 人。幾千萬と云ふことを知らず。貴賤の悲む聲街にみ
J09_0307B24: ち。道俗のしたふ涙。地をうるほす云云鳥羽の南
J09_0307B25: の門より。川舟に召て下り玉ふ。攝津の國經が島。
J09_0307B26: 兵庫の本名播磨の國高砂の浦。同く室の泊り。讃岐の國鹽
J09_0307B27: 飽入道西忍が舘に至る迄。多くの人を結縁敎化し
J09_0307B28: 玉ひ終に同國子松の庄におちつき玉ひぬと。あは
J09_0307B29: れ悲しきことに非すや。如是艱難を忍受して。勇猛
J09_0307B30: 精進なる御志を遂させ玉ふ。大師の御遺訓なれ
J09_0307B31: ば。仰で信じ俯て信じて。一向稱名せずんばある
J09_0307B32: べからず。
J09_0307B33: さて此書は。唯南無阿彌陀佛と申して。往生するに
J09_0307B34: 相違なしと。二尊を證にして誓言を立てて。我人の

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