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J1370 一枚起請講説 法洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0304A01: を蒙る貴賤。往生の本懷を望む道俗。嘆き悲むこと。
J09_0304A02: たとへをとるに物なし。門弟等嘆きあへる中に。法蓮
J09_0304A03: 房申されけるは。住蓮安樂は罪科せられぬ。御流罪
J09_0304A04: は一向專修興行の故と云。然るに老邁の御身遼遠の
J09_0304A05: 海波に趣きましまさば。御命安全ならじ。我等恩顏
J09_0304A06: を拜し。嚴旨を承ることあるべかず。又師匠流刑の罪
J09_0304A07: にふし給はば。殘り止まる門弟。面目あらんや。且
J09_0304A08: は敕命なり。一向專修の興行。止むべきよし奏し給
J09_0304A09: ひて。内内御化導有べくや侍らんと。申されけるに。
J09_0304A10: 大師の給はく。流刑さらに恨とすべからず。其故は。
J09_0304A11: 齡すでに八旬にせまりぬ。たとひ同じ都に住するも。
J09_0304A12: 娑婆の離別。ちかきにあるべし。たとひ山海を隔つ
J09_0304A13: とも。淨土の再會。なんぞ疑はん。又厭ふとも存る
J09_0304A14: は人の身なり。惜むとも。死るは人の命なり。何ぞ
J09_0304A15: 必しも所によらんや。しかのみならず。念佛の興行。
J09_0304A16: 京師にして年久し。四十三の御年より七十五の御年まで中間三十二年邊鄙に趣き
J09_0304A17: て。田夫野人を勸めんこと。年來の本意なり。然れど
J09_0304B18: も。時至らずして。素意いまだはたさず。今事の縁
J09_0304B19: によりて。年來の本意を遂んこと。頗る朝恩とも云べ
J09_0304B20: し。此法の弘通は人とどめんとすとも。法さらにと
J09_0304B21: どまるべからず。諸佛濟度の誓ひ深く。冥衆護持の
J09_0304B22: 約ねんごろなり。然れば何ぞ世間の譏嫌をはばかり
J09_0304B23: て。經釋の素意をかくすべきや。ただしいたむ所は。
J09_0304B24: 源空が興ずる淨土の法門は。濁世末代の衆生の。決
J09_0304B25: 定出離の要道なるが故に。常隨守護の神祇冥道。定め
J09_0304B26: て無道の障難を咎め給はん歟。命あらん輩。因果のむ
J09_0304B27: なしからざることを。思ひ合すべしと。仰られける。
J09_0304B28: 大師の仰に。因果のむなしからざることを思ひ合
J09_0304B29: すべしと。仰られたるが。御流罪よりは十五ケ年目
J09_0304B30: 御遷化よりは十ケ年目。承久三年秋七月。北條泰
J09_0304B31: 時が計ひにて。本院後鳥羽院は隱岐の國。中院土
J09_0304B32: 御門院は後鳥羽院第一の皇子佐渡の國。新院順德院は後鳥羽院第三の皇子
J09_0304B33: 佐渡の國六條の宮雅成親王は後鳥羽院第二の皇子伹馬の國冷
J09_0304B34: 泉の宮賴仁親王は後鳥羽院第四の皇子備前の國へ。水も交へ

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