浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0287A01: | さて此起請誓言を。文の中間に置玉へること。至て |
J09_0287A02: | の妙釋なり。其故は。是より上は安心。是より下は |
J09_0287A03: | 起行なり。此誓言を中間におゐて。前の安心を結し。 |
J09_0287A04: | 後の起行を生ずるの義趣。誠に妙釋なり。彼觀經の三 |
J09_0287A05: | 心を。定散二善の中間に説きて。定善散善の二種に。 |
J09_0287A06: | 通ぜしめたまふかごとし。此所にて。智者も愚者も共 |
J09_0287A07: | に。安心は。疑なく往生するぞと思ひとるより外な |
J09_0287A08: | く。起行は。唯一向に念佛するより外なきことを。訖 |
J09_0287A09: | 度決著すべきなり。實に此所を。能能味ひ見るべし。 |
J09_0287A10: | 滅後末代に。邪義の橫濫を防ぎ玉へる。金剛の堤塘 |
J09_0287A11: | は。此一段に極るなり。いかなる愚人なりとも。此起 |
J09_0287A12: | 請誓言に。及び玉へるを見て。更に大師の御心を疑 |
J09_0287A13: | はんや。又いかなる滅後の邪人なりとも。此起請文 |
J09_0287A14: | に向ひて。正義を掠め奪ふことを得んや。されば。 |
J09_0287A15: | 鎭西の正流を汲む輩の。六百年來。他人の邪推に混 |
J09_0287A16: | ぜられず。背徒の邪義にまどはされざるは。全く此 |
J09_0287A17: | 御遺誓の庇蔭なり。總して起請誓言の。善惡共に。 |
J09_0287B18: | 決定して事を成することは。上の題號の下にても辨 |
J09_0287B19: | じたれども。今は正しく。此一枚起請文と得名する。 |
J09_0287B20: | 體となる下なれば。誓言の空しからぬ。事實を談じ |
J09_0287B21: | て。今を况示せん。過ぬる正保三年。江州信樂村と。 |
J09_0287B22: | 山城の湯舟村と。山境の諍論あり。其時五味金右衛 |
J09_0287B23: | 門殿より。檢使を立て。境目を改めらるるに。信樂 |
J09_0287B24: | 村の領分と見分たり。然るに。前前より。湯舟村領 |
J09_0287B25: | 地の證據多端なりける。此時信樂村の者共。申すや |
J09_0287B26: | うは。兎角起請文にて申し譯いたさんとて。村中殘 |
J09_0287B27: | らず起請を書て。山を取り侍りける。其起請の中に。 |
J09_0287B28: | 白癩黑癩とならんと。誓言を書入けるが。夫れより |
J09_0287B29: | 三年を經る。慶安二年の春の頃より。其村五六十軒。 |
J09_0287B30: | 殘らず癩になりにけり。其中に老分三人ありて。連 |
J09_0287B31: | 判に加はらざりけるが。是のみ恙なかりけりと。寔 |
J09_0287B32: | に起請の天罰いちじるしく顯はれたり。已上。洞空和上の門人、蓮盛法 |
J09_0287B33: | 師の記錄に出。是はこれ。唯假初に當座の非を飾らん爲にし |
J09_0287B34: | て。眞實の心よりはたてねども。終に誓ひし詞の如。 |