ウィンドウを閉じる

J1370 一枚起請講説 法洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0267A01: 或書に。梅洞文集を引て。此御製を。順德院也と
J09_0267A02: いへども彼帝は。佐渡の國へ遷され給ひしこと。近
J09_0267A03: く御傳翼讃に。諸書を引けり。しかも白峯には。崇
J09_0267A04: 德帝の御廟あれば。かたかた彼説は。誤りなるべ
J09_0267A05: し。
J09_0267A06: 又八月十五夜に。空の曇りければ。賀茂の長明。『吹
J09_0267A07: はらへ我賀茂山のみねのあらし。こはなほざりの秋
J09_0267A08: のそらかは。』と詠じけれは。忽ち一陣の快風。賀茂
J09_0267A09: 山の方より吹來て。雲吹拂ふて。さつはりと晴れた
J09_0267A10: りと。又後の名月九月十三夜の曇りたるに。住吉の
J09_0267A11: 神主津守の國助。『よし曇れくもらは月の名やたてん
J09_0267A12: 我身ひとりの秋の空かは。』と詠じたれば。忽ち雲晴
J09_0267A13: れしとなり。凡世間の月を見る程の人。一人として
J09_0267A14: 曇るを嘆かぬはなけれども。思ふた計では晴れぬ。
J09_0267A15: 聲に出して歌に詠だで雲が晴れた。何に况や。本願
J09_0267A16: の口稱名號を。聲に出して唱ふる者に於てをや。か
J09_0267A17: らいあくの四字合成の風で。妄念煩惱の雲霧も自ら
J09_0267B18: 吹晴され。終には淸淨光佛の光明を拜見して。來迎
J09_0267B19: 引接の大利益を得ること。一點の疑もなきことなり。今
J09_0267B20: 其現證を示さば。往譽成易信士。俗名は田中左平。濃
J09_0267B21: 州大垣の家士なり。生平殺生を好み。勤仕の暇には。
J09_0267B22: 魚鳥をかり漁り。自ら肉味をむさぼるのみならず。人
J09_0267B23: に賣りて利を得ることをなせり。爾るに。左平か末子
J09_0267B24: に。七歳になる男子ありしが。宿世の善因やありけ
J09_0267B25: ん。寺院へ參詣し。禮拜念佛することをなす。父に似
J09_0267B26: ざる善人ぞと。人人奇特の思ひをなしける。あると
J09_0267B27: き。ふと煩ひつき。醫藥心をつくせども。更に其し
J09_0267B28: るしなし。今はかぎりと見へけるとき。父に向て。
J09_0267B29: 私は唯今極樂へ參ります。我なき跡にて。我爲にも
J09_0267B30: 御身の爲にも。必必殺生を止めてたべと。涙ととも
J09_0267B31: に遺言し。念佛數返となへ。眠るが如く息たへしか
J09_0267B32: ば。さしも強惡なる父も。小兒が遺言骨髓に徹せし
J09_0267B33: にや。直にありつる殺生の具を悉く破り捨。是より
J09_0267B34: ふつに殺生をやめ。佛道修行の志をたて。蓮生寺敬譽

ウィンドウを閉じる