浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0267A01: | 或書に。梅洞文集を引て。此御製を。順德院也と |
J09_0267A02: | いへども彼帝は。佐渡の國へ遷され給ひしこと。近 |
J09_0267A03: | く御傳翼讃に。諸書を引けり。しかも白峯には。崇 |
J09_0267A04: | 德帝の御廟あれば。かたかた彼説は。誤りなるべ |
J09_0267A05: | し。 |
J09_0267A06: | 又八月十五夜に。空の曇りければ。賀茂の長明。『吹 |
J09_0267A07: | はらへ我賀茂山のみねのあらし。こはなほざりの秋 |
J09_0267A08: | のそらかは。』と詠じけれは。忽ち一陣の快風。賀茂 |
J09_0267A09: | 山の方より吹來て。雲吹拂ふて。さつはりと晴れた |
J09_0267A10: | りと。又後の名月九月十三夜の曇りたるに。住吉の |
J09_0267A11: | 神主津守の國助。『よし曇れくもらは月の名やたてん |
J09_0267A12: | 我身ひとりの秋の空かは。』と詠じたれば。忽ち雲晴 |
J09_0267A13: | れしとなり。凡世間の月を見る程の人。一人として |
J09_0267A14: | 曇るを嘆かぬはなけれども。思ふた計では晴れぬ。 |
J09_0267A15: | 聲に出して歌に詠だで雲が晴れた。何に况や。本願 |
J09_0267A16: | の口稱名號を。聲に出して唱ふる者に於てをや。か |
J09_0267A17: | らいあくの四字合成の風で。妄念煩惱の雲霧も自ら |
J09_0267B18: | 吹晴され。終には淸淨光佛の光明を拜見して。來迎 |
J09_0267B19: | 引接の大利益を得ること。一點の疑もなきことなり。今 |
J09_0267B20: | 其現證を示さば。往譽成易信士。俗名は田中左平。濃 |
J09_0267B21: | 州大垣の家士なり。生平殺生を好み。勤仕の暇には。 |
J09_0267B22: | 魚鳥をかり漁り。自ら肉味をむさぼるのみならず。人 |
J09_0267B23: | に賣りて利を得ることをなせり。爾るに。左平か末子 |
J09_0267B24: | に。七歳になる男子ありしが。宿世の善因やありけ |
J09_0267B25: | ん。寺院へ參詣し。禮拜念佛することをなす。父に似 |
J09_0267B26: | ざる善人ぞと。人人奇特の思ひをなしける。あると |
J09_0267B27: | き。ふと煩ひつき。醫藥心をつくせども。更に其し |
J09_0267B28: | るしなし。今はかぎりと見へけるとき。父に向て。 |
J09_0267B29: | 私は唯今極樂へ參ります。我なき跡にて。我爲にも |
J09_0267B30: | 御身の爲にも。必必殺生を止めてたべと。涙ととも |
J09_0267B31: | に遺言し。念佛數返となへ。眠るが如く息たへしか |
J09_0267B32: | ば。さしも強惡なる父も。小兒が遺言骨髓に徹せし |
J09_0267B33: | にや。直にありつる殺生の具を悉く破り捨。是より |
J09_0267B34: | ふつに殺生をやめ。佛道修行の志をたて。蓮生寺敬譽 |