ウィンドウを閉じる

J1370 一枚起請講説 法洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0266A01: より娑婆に執著しきつて居ること故。たつとひ御談
J09_0266A02: 義。有がたひ御説法じやと。涎を流して喜ぶなり
J09_0266A03: 此聞聾の後世云何。必墮三惡の札付なり。明盲に
J09_0266A04: 此失あらんや。慚るに足らぬ明盲をば慚て。慚て
J09_0266A05: も愧べく。悲みても悲しむべき。聞聾を。慚悲ま
J09_0266A06: ざるこそ。淺ましけれ云云
J09_0266A07: 爾れば。此段を聞得ての得心は。本願に乘して往生
J09_0266A08: 遂ると云は。念佛を唱へねばならぬこと。其唱ふると
J09_0266A09: 云が。舌の動く位からは。皆稱名念佛で我唱ふる聲
J09_0266A10: の。我耳に入る位からは。高聲念佛の内なり。高聲
J09_0266A11: 念佛十種の德は。業報差別經の説なれども。聲に出
J09_0266A12: すことのならぬ人は。心に六字を運ぶ念をなすをも。
J09_0266A13: 稱名と云はるる。是を經意の念佛。意念の念佛と云
J09_0266A14: て。觀念憶念とは別なり。爾れども。聲に出して唱
J09_0266A15: へらるる者が。聲に出さひでも。よいと云ことではな
J09_0266A16: し。或は大病の人。或は瘖瘂の類ひ。或は君前の勤
J09_0266A17: 仕する人。或は嫁娶の席にある人などのことなり。故
J09_0266B18: に。大師此ことを示し玉ひて。口に唱へ心に念ずる。同
J09_0266B19: じ名號なれば。いづれも往生の業となるべし。伹し
J09_0266B20: 佛の本願は稱名とたて玉へる故に。聲に出すべきな
J09_0266B21: り。經には令聲不絶具足十念と説き。釋には稱我名
J09_0266B22: 號下至十聲と判じ給へりと。あれば彌陀の本願に乘
J09_0266B23: ずるには。聲に出して唱ふることと落著して。必必心
J09_0266B24: 念歸命など云に。紛らかされぬやうに用心すべし。
J09_0266B25: 兎角此聲が佛の本願に乘ずると云が。肝要の得心。
J09_0266B26: 夫れに付て。世間でも聲に出した所で。物の決定す
J09_0266B27: ること多し。往時。人王七十五代の天子崇德帝。事の
J09_0266B28: 故ありて。四國讃岐へうつされ給ひたるに。いつし
J09_0266B29: か金殿樓閣は。丸木造りのわら屋とかはり。百官百
J09_0266B30: 司の影たゆれば。さらでもわびしき配所なるに。初
J09_0266B31: 杜鵑の聲を聞給ひて。頻りに。都慕はしく思召され
J09_0266B32: ければ。『なけばきく聞は都の戀しきにこの里すぎよ
J09_0266B33: 山ほととぎす』。と詠じ給ひしに。この御製ありし後
J09_0266B34: は。讃州白峯の邊りには。杜鵑の鳴くことなしとぞ。

ウィンドウを閉じる