浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0266A01: | より娑婆に執著しきつて居ること故。たつとひ御談 |
J09_0266A02: | 義。有がたひ御説法じやと。涎を流して喜ぶなり |
J09_0266A03: | 此聞聾の後世云何。必墮三惡の札付なり。明盲に |
J09_0266A04: | 此失あらんや。慚るに足らぬ明盲をば慚て。慚て |
J09_0266A05: | も愧べく。悲みても悲しむべき。聞聾を。慚悲ま |
J09_0266A06: | ざるこそ。淺ましけれ云云 |
J09_0266A07: | 爾れば。此段を聞得ての得心は。本願に乘して往生 |
J09_0266A08: | 遂ると云は。念佛を唱へねばならぬこと。其唱ふると |
J09_0266A09: | 云が。舌の動く位からは。皆稱名念佛で我唱ふる聲 |
J09_0266A10: | の。我耳に入る位からは。高聲念佛の内なり。高聲 |
J09_0266A11: | 念佛十種の德は。業報差別經の説なれども。聲に出 |
J09_0266A12: | すことのならぬ人は。心に六字を運ぶ念をなすをも。 |
J09_0266A13: | 稱名と云はるる。是を經意の念佛。意念の念佛と云 |
J09_0266A14: | て。觀念憶念とは別なり。爾れども。聲に出して唱 |
J09_0266A15: | へらるる者が。聲に出さひでも。よいと云ことではな |
J09_0266A16: | し。或は大病の人。或は瘖瘂の類ひ。或は君前の勤 |
J09_0266A17: | 仕する人。或は嫁娶の席にある人などのことなり。故 |
J09_0266B18: | に。大師此ことを示し玉ひて。口に唱へ心に念ずる。同 |
J09_0266B19: | じ名號なれば。いづれも往生の業となるべし。伹し |
J09_0266B20: | 佛の本願は稱名とたて玉へる故に。聲に出すべきな |
J09_0266B21: | り。經には令聲不絶具足十念と説き。釋には稱我名 |
J09_0266B22: | 號下至十聲と判じ給へりと。あれば彌陀の本願に乘 |
J09_0266B23: | ずるには。聲に出して唱ふることと落著して。必必心 |
J09_0266B24: | 念歸命など云に。紛らかされぬやうに用心すべし。 |
J09_0266B25: | 兎角此聲が佛の本願に乘ずると云が。肝要の得心。 |
J09_0266B26: | 夫れに付て。世間でも聲に出した所で。物の決定す |
J09_0266B27: | ること多し。往時。人王七十五代の天子崇德帝。事の |
J09_0266B28: | 故ありて。四國讃岐へうつされ給ひたるに。いつし |
J09_0266B29: | か金殿樓閣は。丸木造りのわら屋とかはり。百官百 |
J09_0266B30: | 司の影たゆれば。さらでもわびしき配所なるに。初 |
J09_0266B31: | 杜鵑の聲を聞給ひて。頻りに。都慕はしく思召され |
J09_0266B32: | ければ。『なけばきく聞は都の戀しきにこの里すぎよ |
J09_0266B33: | 山ほととぎす』。と詠じ給ひしに。この御製ありし後 |
J09_0266B34: | は。讃州白峯の邊りには。杜鵑の鳴くことなしとぞ。 |