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J1370 一枚起請講説 法洲 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J09_0262A01: たく降り積りて。遍身を埋み。寒氣髓に徹り。總身
J09_0262A02: 堅冰の如くになり。已に絶命に及びなんとす。時に
J09_0262A03: 上人慚愧して。我業障の高きこと。此高山にすぎ。生
J09_0262A04: 死の流れ深きこと。此雪の深きにこゆ。是に依て心眼
J09_0262A05: を開くことを得ず。ああいかんがせん。よしよし此世
J09_0262A06: に見佛成ぜずとも。我佛に攝取の本願あり。名號を
J09_0262A07: 稱して命終せは。必無漏の寶國に生れ。速に滿月の
J09_0262A08: 尊體を覩奉らんこと。更に疑ひあることなしと。夫より
J09_0262A09: 一向臨末の念に住して。念佛し玉ふに。不思議や大
J09_0262A10: 雨俄に降り下りて。體を埋みし深雪も消へ。猶其雨
J09_0262A11: の一滴。口中に入るに。味ひ甘露の如なりしが。今
J09_0262A12: 迄出ざりし聲も。和雅の音聲を。思ひのままに發し。
J09_0262A13: 堅冰の如く凍へすくみし五體。自在輕安なること鵞毛
J09_0262A14: の如くなりければ。こは奇異のことかなとますます高
J09_0262A15: 聲し給ふに。師の後の方より。呼ふ聲の聞へしかば。
J09_0262A16: ふりかへり見給ふに。遙なる空中に。嚴飾微玅の五
J09_0262A17: 重の寶橋橫たはり。白雲是をささへたり。其橋の大
J09_0262B18: きさは。京都五條の橋ほどなる。其橋づめに。齡十
J09_0262B19: 四五歳計に見ゆる天童たちて。手に拂子やうの物を
J09_0262B20: 持て。師を招く。師かしこに行ばやと。一念きざす
J09_0262B21: に。飄然とかの寶橋の中間に至り。安坐し玉ふ。然
J09_0262B22: るに此寶橋。師を乘つつ空を凌き東をさして飛ひ去
J09_0262B23: ること。凡十里計りにも及ぶと思ふときに。空中にと
J09_0262B24: どまる。師こはいかなる故ならんと。左右を顧み玉
J09_0262B25: ふに。富士山の絶頂に。彼山一倍ほどに大身なる如
J09_0262B26: 來。寶蓮の上に坐し。光明赫奕として。師の頂を照
J09_0262B27: し給ふ時に。師身の毛いよだち。悲喜交流の涙にむ
J09_0262B28: せび。五體を投して禮敬し玉ひ。且つ佛恩を謝し奉
J09_0262B29: らんとし玉ふに。悲咽して言ふことを得給はず。其時
J09_0262B30: 如來御容を動かし。莞爾と欣笑し。微玅の法を演説
J09_0262B31: し給ふ。御説法の旨趣は。師祕して語り玉はざれは。しる人なし。斯く優曇華の佛に値
J09_0262B32: 遇し奉り。且甘露の法を拜聽し玉ひければ。廓然と
J09_0262B33: 心ひらけ。歡喜拜首し玉ふに。不覺に地にをち立給
J09_0262B34: ふ。其所は塔の峯の麓なり。折しも農夫そこに居合

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