浄土宗全書を検索する
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巻_頁段行 | 本文 |
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J09_0257A01: | り。さて其上に於ては。起行をはげます爲には。若 |
J09_0257A02: | し此念佛が觀念と云ことならば。云何したものであら |
J09_0257A03: | ふと。思ひ見るべし。實に我等が往生は。賴も綱も |
J09_0257A04: | 切れ果ててあるなり。其故は。一毫未斷の凡夫。狂 |
J09_0257A05: | 醉顚倒が持前なれば。彼六窻一獮猴の譬の如く。貪 |
J09_0257A06: | 念が止めば瞋恚が止めば愚癡。身三口四の旋 |
J09_0257A07: | 火輪。片念雙思の定りなきは。自己返照して思ひ知 |
J09_0257A08: | るべし。さればこそ。善導大師は。識颺神飛觀難成 |
J09_0257A09: | 就と釋し。宗祖大師は。今時の人觀念をなすべから |
J09_0257A10: | ず。極樂の依正を觀ずとも。櫻梅桃李の華ほども。 |
J09_0257A11: | 運慶康慶が作れる佛ほども。觀じ顯すことを得じと。 |
J09_0257A12: | の玉へり。爾れば。若し本願念佛は口稱ぞと云。正 |
J09_0257A13: | 意が顯はれねば。たすかる道は。たへはつると見れ |
J09_0257A14: | ば。至極危きことにてありしなり。是に就て。今觀念 |
J09_0257A15: | の成じ難き。現證を擧て。口稱増進の助縁とせば。 |
J09_0257A16: | 小田原と云寺に。敎壞上人と云人ありけるが。後に |
J09_0257A17: | は高野に住ける。一つの水瓶を持れけるが。心にか |
J09_0257B18: | なひて執し思はる。或日此水瓶を椽に置て。奧の院 |
J09_0257B19: | へ參りて念誦せらるるに。此水瓶のことを思ひ出して。 |
J09_0257B20: | あからさまに椽に置つれば。人やとらんとおぼつか |
J09_0257B21: | なくおぼゆ。こはよしなしと。思ひすてんとするに。 |
J09_0257B22: | 彌此念しづまらで。如法ならざりしかば。よしなく |
J09_0257B23: | おぼへて歸るやおそきと。あたりの石の上に置て。 |
J09_0257B24: | 打くだきて捨られしとなん。發心集一の卷如此心に愛する |
J09_0257B25: | 所あれば。水瓶さへも念誦觀法のさはりをなす。出 |
J09_0257B26: | 家すら斯ぞ。况や在家などは。思ひ絶たることなり。 |
J09_0257B27: | 無心の水瓶位か。愛子愛妻愛夫等。執縁の聚集なる |
J09_0257B28: | をや。云何ぞ觀念の器ならん。假令尼法師と姿をか |
J09_0257B29: | へても。雲を著風を喰ても住はれぬことなれば。心に |
J09_0257B30: | 愛する物。などてなからん。愛して邪魔になる物ほ |
J09_0257B31: | ど。反て打すつる事はならぬものなり。されば。在 |
J09_0257B32: | 家も出家も押なべて。觀念の修行は。今時の人には |
J09_0257B33: | 思ひ絶へたることなり。爾るを忝も元祖大師。本願の |
J09_0257B34: | 念佛と云。古來漢和兩朝の諸の智者達の。沙汰せら |