要偈
提供: 新纂浄土宗大辞典
ようげ/要偈
聖光の著作である『授手印』の袖書に記されている「究竟大乗浄土門 諸行往生称名勝 我閣万行選仏名 往生浄土見尊体」のこと。「四句の偈」、「伝法要偈」ともいう。浄土宗の伝法において最も重要な偈文であり、鎮西白旗系統の『授手印』のみに相伝されている、いわば鎮西白旗の生命線的な偈文でもある。「究竟大乗浄土門」は「大乗仏教の究極の教えは浄土門である」との意味であり、これは『無量寿経』の本旨を要約した一句であるとともに、阿弥陀仏の選択を意味する内容でもある。「諸行往生称名勝」は「様々な実践行においても回向さえできれば極楽世界に往生することは可能ではある。しかし末代の凡夫にそのような回向は極めて困難である。末代の凡夫はただ選択本願称名念仏一行のみで極楽世界に往生するのだ。選択本願称名念仏一行こそが、あらゆる実践行の中で最も勝れているのだ」の意味である。この句は『観経』の総意をまとめた一句であり、釈尊の選択を意味する内容でもある。「我閣万行選仏名」は「私は一切の他の実践行を捨てて、ただ称名念仏一行のみを選び取る」という意味である。この句は『阿弥陀経』の総意をまとめた内容であり、また諸仏の選択を意図した内容でもある。なお、この「我」は称名念仏一行を選択した阿弥陀仏であり、また阿弥陀仏の救済と念仏の教えこそが真実の教えであるとした釈尊であり、また念仏一行のみを絶讃した諸仏であり、そして阿弥陀仏が人の姿としてこの世界に現れ本願念仏を説いた善導でもある。「往生浄土見尊体」は「阿弥陀仏の極楽浄土に往生し、阿弥陀仏と相見える」という意味であり、この句は「浄土三部経」の総意であると共に、阿弥陀仏と釈尊と諸仏の選択を意図した内容でもある。
【執筆者:柴田泰山】