菩薩戒義疏鈔
提供: 新纂浄土宗大辞典
ぼさつかいぎしょしょう/菩薩戒義疏鈔
六巻。円琳著。『梵網菩薩戒経』の注釈書である智顗の『菩薩戒義疏』(『天台戒疏』)をさらに註釈したもの。はじめ四巻だったものを嘉禎三年(一二三七)に著者自身が添削し再編して六巻本とした。四巻本の成立時期は不明だが、奥書より、俊芿帰朝後(一二一一)以降に著されたと考えられる。本書は『菩薩戒義疏』上下各巻につき、それぞれ三巻に分けて詳細に解説を加えたものである。円琳は証真の弟子として『菩薩戒義疏』と戒に関する私記、授戒儀を授かり、また俊芿に学び戒を授かっている。義寂・法蔵・法銑・太賢など唐・宋代の『梵網経』の註釈や、明曠をはじめとする中国天台諸師の註釈を多岐にわたって網羅していると共に証真・俊芿の説示が所々に引用されている。道光は『天台菩薩戒義疏見聞』の冒頭に相伝の縁起を記すなかで、当時、建仁寺八代の長老となっており一乗戒の碩学として誉れの高かった円琳を訪ね『菩薩戒義疏』を学んだと述べている。道光は『見聞』において本書を日本で証真の述作に次いで二番目に撰述された注釈書と位置付けており(続浄一一・一七〇下)、要所で引用している。
【所収】続浄一一、仏全七一
【執筆者:渋谷康悦】