真言律宗
提供: 新纂浄土宗大辞典
しんごんりっしゅう/真言律宗
鎌倉時代の南都戒律復興僧である叡尊(一二〇一—一二九〇)を宗祖とし、奈良県の西大寺(奈良市西大寺芝町)を総本山とする宗派。現在の真言律宗は戒律・密教の双修を根本宗義とし、昭和二七年(一九五二)の『真言律宗宗憲』に「第二条 この宗は密律不二の教旨により、真言密教の奥旨を伝え、戒律を学修し済世利人の聖業を期する」とある。それは『西大勅諡興正菩薩行実年譜』の寛元三年(一二四五)条に収載された、叡尊から高弟信空への付嘱記の「律法と密教と一心において日月のごとし」という一節にも明らかだが、「真言律」の呼称は叡尊自身に発するものではない。叡尊門下には法相宗的戒律観も色濃く、実質的な「真言律」の提唱は江戸前期の浄厳まで下るものとされる。室町期以降、南都の律宗は衰退の道を辿るが、江戸時代には京都西明寺の明忍、和泉神鳳寺の快円、河内野中寺の慈忍、江戸霊雲寺の浄厳らが出て復興し、その影響で西大寺門流も活性化した。なお一宗として独立を遂げたのは、明治二八年(一八九五)である。伝統的法要として、光明真言会(毎年一〇月三日~五日)が知られる。
【参考】『近代の西大寺と真言律宗』(西大寺、一九九六)、上田霊城「江戸仏教の戒律思想(一)」(『密教文化』一一六、密教研究会、一九七六)、同「江戸仏教の戒律思想(二)」(『密教学研究』九、日本密教学会事務局、一九七七)
【執筆者:舩田淳一】