無著
提供: 新纂浄土宗大辞典
むじゃく/無著
四世紀頃の人。ⓈAsaṅga。阿僧伽と音写される。『摂大乗論』や『顕揚聖教論』の著者とされ、唯識瑜伽行派の論師。弟とされる『俱舎論』の著者世親とともに唯識思想を大成させた。伝承によると、北インドのガンダーラ地方にあるプルシャプラ(現・パキスタンのペシャワール)に、三人兄弟の長子として生まれた。三兄弟はともに婆藪槃豆と名づけられたが、大乗の空の瞑想を身につけ、執着を無くしたので、長子である婆藪槃豆を無著と呼ぶ。後、無著は弟である世親を部派から大乗に転向するよう勧め、これにより世親は瑜伽行派の学匠となったとされる。ただし、この伝承は、世親研究の進展により疑問が付されている。
【執筆者:石田一裕】