山越阿弥陀図
提供: 新纂浄土宗大辞典
やまごえあみだず/山越阿弥陀図
阿弥陀来迎図の一種。阿弥陀仏や菩薩が山越しに出現し来迎する姿を描いた図で、阿弥陀仏の姿を、山から満月が出でる姿、あるいは落日の姿に見立てて描く。鎌倉時代以降にその作例が見出せる。多くの場合、阿弥陀仏は、観るものに対して正面を向いて描かれる。金戒光明寺本(国重要文化財、鎌倉時代)は転法輪印を結ぶ阿弥陀仏の手に、糸をつないだ痕跡が残され、この図が、臨終の儀礼に用いられたことをうかがわせる。禅林寺本(国宝、鎌倉時代)では、左上隅の円相の中に阿字が描かれ、阿字が象徴する大日仏と阿弥陀仏とを同体とする真言系浄土教の思想が看取される。【図版】巻末付録
【執筆者:若麻績敏隆】