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大乗大義章

提供: 新纂浄土宗大辞典

だいじょうだいぎしょう/大乗大義章

三巻。『鳩摩羅什法師大義』ともいう。大乗の教義に対する廬山慧遠からの質問に対して、鳩摩羅什が回答した書簡をまとめたもの。全部で一八の問答が収録されている。廬山慧遠からの質問は四〇七年から鳩摩羅什に送られ始め、以後、何度か問答が繰り返されたようである。『出三蔵記集』一二では、例えば「如・法性・真際を問う。釈慧遠、什法師答う」(正蔵五五・八三上)というように、一八の問答が個別に収録されている。『歴代三宝紀』七では「大乗中の深義を問う十八科、合して三巻。ならびに羅什答う」(正蔵四九・七二上)とあるので、それまでに三巻一八章の形態にまとめられたものと考えられる。問答は体系的に交わされているのではなく、廬山慧遠の各種の質問に鳩摩羅什が答えるものとなっている。廬山慧遠の質問の中心は法身の問題であり、鳩摩羅什が空思想の立場から答を提示して、法身などの概念が明確になっていったものといえる。その他、経典間の内容の相違などについての問答もあり、当時のインド仏教学と中国仏教学における問題を伝える重要な書である。


【所収】正蔵四五、続蔵五四、木村英一編『慧遠研究 遺文篇』(創文社、一九八一)


【参考】木村英一編『慧遠研究 遺文篇』『同 研究篇』(創文社、一九八一)、横超慧日「大乗大義章研究序説」「大乗大義章における法身説」(『中国仏教の研究』二、法蔵館、一九七一)、鎌田茂雄『中国仏教史』二(東京大学出版会、一九八三)、櫻部建「慧遠—念仏門の鼻祖—」(『浄土仏教の思想』三、講談社、一九九三)


【執筆者:曽和義宏】