声聞
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょうもん/声聞
仏の教えを聞いて悟りを目指す出家の修行者のこと。ⓈśrāvakaⓅsāvakaⓉnyan thosの訳。弟子とも訳す。声を聞く者の意味で、釈尊在世中は出家修行者でも在家信者でも、釈尊の教えを聞く者を意味し(『スッタニパータ』〔『経集』〕三九三、南伝二四・一四三)、ジャイナ教などでも同様であった。後になると、仏教では釈尊の教えに従って悟りを目指す出家の修行者に限定されるようになり(『雑阿含経』一四、正蔵二・九六中~下)、逆にジャイナ教では在家信者に限定されるようになった。また、「如来声聞衆を最も第一と為す」(『雑阿含経』三一、正蔵二・二二六上)と説かれるように、当初仏教教団の中心的存在であった。ところが、大乗仏教興隆後は、主に部派仏教の出家修行者を示す言葉となった。大乗仏教が目指す利他行を中心とした菩薩に比べ、声聞は縁覚と共に、自己の悟りのみを求めて衆生を救済することがない者として考えられ、両者は「劣った者」を意味する小乗と呼ばれた(『大智度論』三九、正蔵二五・二三五中~六上)。声聞・縁覚を二乗と呼び、菩薩を加えて三乗とする(『十住毘婆沙論』正蔵二六・二〇上~一上)。
【執筆者:榎本正明】