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五重宗脈布薩三伝

提供: 新纂浄土宗大辞典

ごじゅうしゅうみゃくふさつさんでん/五重宗脈布薩三伝

五重と宗脈と布薩戒の三種類の伝法。近世檀林での伝法制度の三段階をいう。五重とは浅学相承五重自証門伝ともいい、檀林入寺した浅学衆に授ける五重伝法である。宗脈とは碩学相承宗脈化他門伝ともいい、浅学衆がそののちに学行を研鑽し、碩学衆となった者に授ける伝法をいう。布薩戒とはこの両伝を相承した者に授ける伝法であり、阿弥陀仏の自内証を戒体とし、安心起行戒相とし、往生極楽を戒用とするもので、当時、浄土宗最極究竟の伝法として尊重伝授する風習が生じた。また檀林ではその寺の伝灯を重んじて、それぞれ独自の箇条伝法が伝承された(恵谷隆戒浄土教の新研究』二九六~三〇一、山喜房仏書林、一九七六)。ただし、『浄土宗法度』では、五重と宗戒両脈璽書伝法とし、布薩戒伝法制度として公認していない(越智専明浄土宗伝法沿革』二二ウ、増上寺、一九六五)。布薩妄伝説は江戸中期より敬首きょうじゅ・要信・大玄等が唱えたが、宝暦五年(一七五五)諸檀林の衆議により円頓戒璽書布薩戒の存続執行を議決した(「山門通規」四、『増上寺史料集』三、二〇四)。明治二〇年(一八八七)八月、福田行誡は「布薩法式すべて此を廃す」とし(「伝法復古」『平成新修福田行誡上人全集』一、三一五、USS出版、二〇〇九)、同二一年さらに、「布薩は妄伝なり、廃すべし」(『伝語』同上、三四八)とした。同四二年八月、神谷大周は宗務に建言して、大正二年(一九一三)一月、布薩全廃を決定した(神谷大周伝法沿革依憑詮考』八一、私家版、一九一三)。現在は宗戒両脈璽書浄土宗伝法となっている。


【参照項目】➡五重相伝布薩戒伝語


【執筆者:西城宗隆】