五重始末
提供: 新纂浄土宗大辞典
ごじゅうしまつ/五重始末
一巻。見誉善悦撰。成立年代は不明。五重の口伝が廃忘しないように記録したものであるが、相伝者については不明である。本書の「第二授手印之事」において、「伝法要偈の事、古来の切紙に之有り。この四句の文を三経に配当する口伝」(『伝灯輯要』上、二〇五)とあり、この四句の偈文の中の「究竟大乗浄土門」の句を『無量寿経』、「諸行往生称名勝」の句を『観経』、「我閣万行選仏名」の句を『阿弥陀経』と、三句をそれぞれ三経に配し、「往生浄土見尊体」とは三経所得の帰結であるとしている。ちなみに「我閣」の「我」の字に注意すべきことが記されている。また、本書が後世の順阿隆円の『吉水瀉瓶訣』『浄業信法訣』に与えた影響は頗る大きく、往古の伝法要偈の作法を知るうえでも貴重なテキストである。
【所収】『伝灯輯要』上
【参考】林彦明『五重大会勧誡講録』(総本山知恩院、二〇〇九)、岸覚勇『大五重大意』(記主禅師鑽仰会、一九七二)、恵谷隆戒『浄土教の新研究』(山喜房仏書林、一九七六)
【参照項目】➡善悦
【執筆者:井野周隆】