五上分結
提供: 新纂浄土宗大辞典
ごじょうぶんけつ/五上分結
衆生を色界・無色界に結び付ける五つの煩悩のこと。すなわち色貪・無色貪・掉挙・慢・無明の五つを指す。五順上分結ともいう。Ⓢpañcordhvabhāgīyāni saṃyojanāniⓅpañc’ uddhambhāgīyāni saṃyojanāni。上分とは上界のことであり、色界・無色界の二つの界を意味する。また結とはⓈsaṃyojanaの訳語で「結びつくこと」を意味し、煩悩の異名とされる。『俱舎論』では「能く有情をして上界を超えざらしむ。上界を順益するが故に順上分結と名づく」(正蔵二九・一〇九上)といい、これら五つの煩悩が衆生を上界から超えさせないとする。この五つは修所断、つまり聖者になってからの長きにわたる修行によってのみ断ち切ることのできる煩悩の代表とされる。換言すれば、この五つを断ち切ることで衆生は三界を輪廻する苦しみから解放され、覚りの境地である阿羅漢果を得ることができると考えられている。『大般若波羅蜜多経』には「五順上分結を尽くして、阿羅漢果を得る」(正蔵五・四三下)とある。
【執筆者:石田一裕】