十念往生
提供: 新纂浄土宗大辞典
じゅうねんおうじょう/十念往生
十称の念仏によって五逆の罪人も阿弥陀仏の極楽浄土へ往生することができるということ。『無量寿経』上の第十八願の文に「乃至十念せんに、もし生ぜずんば、正覚を取らじ」(聖典一・二二七/浄全一・七)とあり、また『観経』下下品の文に「十念を具足して、南無阿弥陀仏と称す。…一念の頃のごとくに、すなわち極楽世界に往生することを得」(聖典一・三一二~三/浄全一・五〇)とあるのに基づく。さらに曇鸞『往生論註』には「乗十念往生」(浄全一・二四五下/正蔵四〇・八三九上)とあり、下品下生の凡夫が十念によって往生できることを明かしている。また法然は『選択集』三で第十八願の名称について言及し、十念往生の願を退け、念仏往生の願とするが、これは「上一形を捨て、下一念を捨つるが故」(聖典三・一二三/昭法全三二一)だからであり、十念往生の語は、念仏往生よりも含むところが少ないことを示していよう。
【執筆者:長尾隆寛】