四門
提供: 新纂浄土宗大辞典
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しもん/四門
一
真性実相へいたるための入り口を大別したもの。有門、空門、亦有亦空門、非有非空門の四。天台宗では蔵教・通教・別教・円教の化法の四教にそれぞれ四門があるとして四教四門を説く。蔵教では因縁生による有の立場から、通教では空の立場から、別教では有・空一方への偏執を離れて、円教では有でも空でもない円融によって、それぞれ四門が説かれる。なお、蔵教の諸経論は有門を、通教の諸経論は空門を、別教の諸経論は亦有亦空門を、円教の諸経論は非有非空門を用いることが多いという。
【資料】智顗『四教義』四、同『摩訶止観』六上(共に正蔵四六)
【執筆者:横田善教】
二
荼毘する葬場の四方に立てる四つの門。火屋の四方に設けられた四門のことをいう。また、その門に掲げられる額を四門額という。発心、修行、菩提、涅槃の四門は釈尊の成道に因み、密教でいう曼荼羅の四門(『渓嵐拾葉集』正蔵七六・六五三中)等の影響に基づいたと思われるが、典拠は不詳である。臨済宗の『諸回向清規』(一五六六)には「四方門額 東発心門 南修行門 西菩提門 北涅槃門 出入非発心門。可通涅槃門」(正蔵八一・六六三上)と説かれ、同時代と見られる浄土宗の『無縁集(徹心葬送次第集)』にも同じく四門を立てて荼毘の儀式を述べている。この時代には四門は一般的な通法として各宗の葬儀において用いられていたようである。浄土真宗でも『百通切紙』の四門鳥居額の項(巻三—三ウ)に、東は善趣門(発心の義なり)・南は通達門(修行の義なり)・西は願入門(菩提の義なり)・北は真如門(涅槃の義なり)と四門の額を記している。『無縁集』では「四門の内は仏果菩提の浄土なり」、「浄土宗の意を述べて云く。四門の内は弥陀の浄土なり」とある。宗義によってその理解するところは相違するが、荼毘の儀式においては重要なものであった。浄土宗ではその後の葬儀資料にも四門が記載されている。また四門は民俗学の立場から自然葬の殯の名残りである殯門に由来するとする見解もある。
【参考】五来重『葬と供養』(東方出版、一九九二)
【執筆者:大澤亮我】