所依の経論
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょえのきょうろん/所依の経論
仏教各宗派の教義が成立するための拠り所となる経典や論書のこと。所憑の経論、依憑の経論ともいう。法然は『選択集』一において浄土宗正依の三経一論を示し、さらには傍依として華厳・法華・随求・尊勝などの経典、起信・宝性・十住毘婆沙・摂大乗などの論を挙げている。このように直接的に拠り所となるものを正依といい、間接的に拠り所となるものを傍依という。善導は『観念法門』において六部往生経として所依の経を定め、先の「浄土三部経」に加え『般舟三昧経』『十往生経』『浄度三昧経』を挙げている。『八宗綱要』には、各宗の所依の経論が紹介され、それによると天台宗は『法華経』を、真言宗は『大日経』や『蘇悉地経』などの秘密真言教を所依とするとされる。また三論宗は『中論』『百論』『十二門論』の三つの論書を、法相宗は大経十一部論を所依とし、その中でも『解深密経』『瑜伽論』『成唯識論』を所学の指南とするとされている。
【執筆者:粂原恒久】