恵谷隆戒箸。昭和五一年(一九七六)一一月、山喜房仏書林刊。従来、散逸文献とされてきた唐代・新羅・奈良期の浄土教文献の復元に努めた画期的な労作。本書により、唐と新羅の浄土教の関係・奈良期の浄土教の具体的な内容など新たな研究視座が得られた。それは著者の源隆国編『安養集』への注目から始まる。道誾どうぎん・龍興りゅうこうの『観経』注釈書、新羅法位・義寂の『無量寿経』注釈書、智光の『無量寿経論釈』の復元研究、ならびに静照の『極楽遊意』の翻刻解説を収める。また、中世・近世における浄土宗伝法史についての論考も貴重である。
【執筆者:能島覚】