位号
提供: 新纂浄土宗大辞典
いごう/位号
広義の戒名(法号)の下につける、居士・大姉などの号の総称。本来は信仰や仏教知識の深さなどを表す称号であるが、現在では死後に贈る諡号と理解されている。位号の決まりは、各寺院の慣例や、地域の習慣などにより異なるため定説はない。大雲が『啓蒙随録』に記す、主な位号とその由来は次のとおりである。在家篤信者の位号である居士については「天竺で豪富ながら官位無き人の称である。維摩居士等が是である(趣意)」(初編一・二六オ)といい、大姉については「七賢女経(七女経)に帝釈賢女を聖姉と呼び、碧巌集第六にはこれを引いて聖姉を大姉と称する(同)」(初編一・二七オ)としている。禅定門・禅定尼は五重相伝を受けた信徒の位号であるが「禅定門に入る人ということである。…入仏法の人を総じて禅定門と称する…禅定門は男女に通じるので、本来は禅定門士・禅定門尼というべきだが、士の字を略する例である(同)」(初編一・二八ウ~オ)という。信士・信女は「在俗の信者である優婆塞・優婆夷を、清信士・清信女という(同)」(初編一・二九ウ)といい、一般檀信徒の位号としている。善士・善女については「経に善男子・善女人という褒号で呼ぶことに依っている。信士・信女よりは一段好い人の称とする例である(同)」(初編一・三〇ウ)といい、信士・信女より上の位号としている。少年少女には童子・童女、幼児には孩子・孩女、嬰児・嬰女などの位号を贈るのが一般的であるが、これについては「童は常の如く、十五歳未満の称である。…但し七歳以上である。…六歳以下は孩子・嬰女である(同)」(初編一・三〇ウ~オ)といい、七歳以上、一五歳未満は童子・童女、六歳以下は孩子・嬰女としている。また「古来、流産した胎児を水子と名づけるが、臨月近くに死産した場合は、幼児と同じく孩子・嬰女として差し支えない(同)」(初編一・三〇オ)ともいっている。能化の位号である和尚については「和上を力生と翻す。僧の功徳は師の力より生ずる意味で、力生の名がある。…上と尚とは音が共に同じである(同)」といい、さらに和尚の呼び方については、南都は「わじょう(和上)」、北嶺は「かしょう」、禅宗は「おしょう」というが、浄土宗は天台に準じて「かしょう」と呼ぶべきであるとしている(初編一・七ウ~八オ)。古来、高徳の和尚を大和尚、老和尚と称するが、大和尚は僧正以上が古例であり、老和尚は生前の功績や僧階などを勘案して贈ることが多い。所化の法子については「法子とは古来存生中より発心出家した者の称である…幼少のころから出家し、未だ檀林修行にいたらない者の称である(同)」(初編一・三一ウ)といい、檀林修行に至らない僧侶の位号としている。尼僧については「法尼は法子に対応するもので、古来発心出家した女性の称であり…比丘尼が具足戒を受けた大尼の称である(同)」(初編一・三一オ)といい、能化の尼僧は比丘尼であり、法尼は単なる出家女性の称としているが、現在は法尼を能化の尼僧に対する位号とする考えが主流になっている。
【資料】大雲『啓蒙随録』
【参照項目】➡戒名
【執筆者:熊井康雄】